「シンプルにウケりゃいいじゃん」お笑いコンビ・虹の黄昏が創り出す独特な世界
◇トリオだったかもしれない「虹の黄昏」 ――久しぶりに再会し、そこで「虹の黄昏」が誕生したんですね。かまぼこ体育館さんは、お笑いに興味は? かまぼこ:まったく興味なかったです。むしろ相棒の話を聞いて、芸人になりたい人間が本当にいるのか! と感じたくらい。ただ誘われたときは役者とは違うけど、芸人も面白そうだなって思った。 野沢:俺が東京で相談したオオタケってやつが、お互いの共通の友人で。オオタケも仕事がうまくいってなくて、じゃあ試しに3人でやってみるかって。いざ3人で始めるぞってときに「よく考えたけどお笑いなんてできねえよ」ってオオタケが抜けたんすよ。 ――もしかしたらトリオだったかもしれないんですね。 野沢:そう。で、相棒もオオタケ経由で誘ったから、“なんだよ、また振り出しかよ”と思ってたら「オオタケなしでも俺はやるよ」って。 かまぼこ:別にオオタケがいなくてもやる気だったんで。 野沢:めちゃくちゃ意外でしたね。完全にノリで来たチャランポランだと思ってたから。それで二人でスタートした感じ。で、“じゃあコンビ名つけないと”って、いろいろ悩んでたんですけど、相棒のメールアドレスが「nizinotasogare」だったんすよ。 かまぼこ:造語なんですけど、美しい言葉ですよね。僕は美しいものが好きなので。 野沢:やかましいわ! 意味はまったく理解できなかったんすけど、漢字にしたらいい名前だなって。 かまぼこ:初めの頃はバカにされてたよなあ。 野沢:たしかに。当時からネタの内容は変わらないので、コンビ名とネタが合っていないと言われることもあったな。 かまぼこ:嫌味を言われても変えなかったね。芸風しかり。 ――唯一無二の芸風で、業界内で高い支持を集めていますが、どのように芸風を確立していったんですか? 野沢:俺が誘ったので、やっぱ俺がネタ作るしかないと。ただ漫才した経験もないし、NSCもすぐ辞めたので、どう作ればいいかわからなくて。だから、片っ端からお笑い番組を見て、番組収録の観覧とかにも行きましたね。とりあえず二人だから、最初は漫才っぽいことができたらいいのかな、と思ってネタを作り始めました。 それっぽいネタを考えて練習するんですけど、自分たちも面白くないし、お客さんも笑ってくれなくて。それで“どうせなら自分たちだけでも面白くやりたいな”って悪ノリで大声出したり暴れたりしたら、それがハマった感じですね。 かまぼこ:自分たちがやってて面白かった。 野沢:そうそう、最初はマジ悪ふざけ、ただの大騒ぎ。……今もそんな変わんねえけど(笑)。でも小声でやったらつまんないけど、オーバーにやることで面白くなるんだと気づいて。実際は面白くなってないんすけど。 ――お客さんにはウケていなかった? 野沢:インパクトはあるから目立ったりはしたけど、ライブでは全然ウケなくて。昔の映像を見返すと、ずっと走ってるだけ。常に全力疾走って感じで、笑える余白がない。 ――何かベースがあるわけではなく、本当にお二人の中から生まれた芸風なんですね。 野沢:練習、練習、練習で生まれたって感じですね。常に本気でやってたんで、練習中に警察が来たりとかもして。そのおかげでどんどん声も大きくなった。 かまぼこ:声が大きければ大きいほどウケるんじゃないかってね。 野沢:そう。お客さんに届いてないだけで、もっとボリュームを上げれば届くんじゃないかって、聞こえてねぇだけだろって(笑)。でかいエネルギーがあれば伝わるんじゃないかなっていう。 ――途中で折れてしまいそうですけど。 野沢:これは間違ってないな、と思ったのは、2年目ぐらいのときにハリウッドザコシショウさんと出会って、バイきんぐさんとやっていたユニットライブを見て衝撃を受けたことです。 ――『やんべえ』ですね。中野twlに見に行ってました。 野沢:マジで!? じゃあ、あの狭い客席で一緒になってたかも。その『やんべえ』で、ザコシさんとバイきんぐさんが大きな声でお客さんをめっちゃ盛り上げてるのを見て、度肝を抜かれて。それで俺たちが今やってる芸風も間違ってねぇな、と自信がつきましたね。