BMW「アートカー」をペイントした職人が手掛けたスペシャルな「M1」が存在した! オークションで約7700万円で落札された特別な1台を紹介します
モーラー本人からの手紙も高評価につながった
BMWは1980年末までに800台のM1を生産し、グループ4の公認を得る計画だったが、残念ながら高価な価格設定もあり、それが完了したのは1981年、FIAがそれまでのカテゴリーを全廃し、グループA/B/C車両による世界選手権を開催することを決定してからのことだった。 結果、M1がレースで活躍する場はル・マン24時間や、M1によるワンメイクレース「プロカー・アソシエーション・シリーズ」に限られる程度の寂しい状況に追い込まれてしまう。だがそれでもBMWはアートカーというもうひとつのプロジェクトをM1で続けることを諦めなかった。 1979年にかのアンディ・ウォーホルがわずか28分でペイントしたM1は、その年のル・マン24時間で6位に入賞する。また、前述の塗装職人であるヴァルター・モーラーが特別に仕立てたM1が存在している。 現在もそのペイントが美しく残るモーラーの手によって塗装されたM1は、フロントリップ、サイド、リアのホイールアーチにパールホワイトのベースコートが施され、ボンネット、エンジンカバー、ルーフにはエアブラシでグレーの濃い色合いの塗装を用いることでM1のシャープなプロファイルが強調している。 オールホワイトのホイールはボディ周囲のブラックのディテールとも調和し、M1の右リアライトの下にはMaurerのサインが刻まれている。その仕上がりはまさにM1のデザインにベストマッチしたものと評価してもよいだろう。 今回RMサザビーズの「ミュンヘン・マスターピース・コレクション」に出品されたこの1979年式M1アートカーに、同社は45万ユーロ~55万ユーロ(邦貨換算約7226万円~8868万円)の予想落札価格を提示。実際の落札価格は47万7500ユーロ(邦貨換算約7699万円)という数字に落ち着いた。 走行距離がわずかに3万3862kmであること、そして2024年8月に書かれたモーラーからの手紙のコピーが備わることも、またそれが高く評価された結果なのだろう。一連のBMWアートカーは、もはやひとつの文化的な遺産と考えても、それは間違いではないようだ。
山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)