「EV大型トラック」は普及するか? 最大航続距離500km、メルセデスベンツの革新的「eアクトロス600」を通して考える
短距離配達の充電拠点
EV化を前提とした場合、トラック運送ビジネスでは走行距離に合わせて充電ステーションを開発することが重要であり、1日200km以下のルート配送であれば、運送事業者の自社の車両基地に設置された充電器で十分に賄える。一方、1日の走行距離が300~400kmであれば、eアクトロス600のような高性能モデルであれば、ルート配送中に充電する必要はない。 このように分けた上で、効率的な充電インフラを整備することが、今後のEVトラックの普及にとって重要なポイントになる。つまり、単に充電ステーションを増やすだけでは不十分であり、EVトラックの効率的な運用を実現する上で難しいポイントとなる。 メルセデス・ベンツ eアクトロス600は、2024年末までに量産が開始され、市販される予定だ。その時点でメルセデス・ベンツがメガワット急速充電システムの設置を開始できるかどうかはまだわからない。 しかし、eアクトロス600は従来の400kWh充電に加え、最初から1000kWh充電を想定したアプリケーションを選択することができる。また、導入時にメガワット充電に対応していなくても、後から追加装備することもできる。 冒頭で述べたように、自家用EV乗用車の世界は混迷を極めており、今後10年でどのような動きを見せるのか、正直予想がつかない。一方、EVトラック分野は、より低コストで効率的な運行がビジネス前提であるため、予測は容易である。 当面、eアクトロス600やメガワット急速充電システムは欧州を中心に運用されるが、運用実績次第ではいずれ日本にも普及するだろう。そのとき、日本のトラックメーカーはどのような事業戦略を構築できるのか。今後の動向に注目したい。
柿内季之(トラックライター)