南葛SC、浦和、ツエーゲン金沢…20日間で80万円、サッカーの輪で実現した能登半島支援。ちょんまげ隊長「関心の糸をつないでほしい」
寄付先に多様性を。「南葛SCが風穴を開けてくれた」
――自分の目で見て、真実を伝えてくださるボランティアやジャーナリストの方々の言葉は本当に貴重だと感じます。炊き出しのほかに、現地ではどんな活動をされているのですか? 角田:被災地の子どもたちが体を動かして遊べる場を提供する活動をしたり、個人や少数で活動している現地ボランティアの方々に、寄付で集めたお金をお渡ししたりしています。長期間にわたって活動を続けていくためには、どうしても資金が必要ですから。
自衛隊と一緒に倒れた電柱を撤去する「DRT JAPAN」「OPEN JAPAN」という技術系のボランティアや、エアコンの室外機を修理する元技術者のチームふじさんという団体もいます。1月の発災後から、2万食の炊き出しを行う南相馬のボンド&ジャスティスにはびっくりしました。炊き出しって、どんなに節約しても一食200円から300円かかるんですよ。それを100人前やったら3万円です。1回分なら僕のポケットマネーからなんとか出せますけど、100回やったら300万円じゃないですか。それは個人の力では難しいので、そうやって、日の目を浴びることもなく活動している方たちに少しでもお金が行くといいなと思っています。 ――そうやって各団体の活動内容を知ると、「こういうところに生かされるのか」とイメージできるし、寄付先の選択肢が広がる気がします。 角田:僕らは、寄付というと日本赤十字社一択になってしまいますよね。決してそれが悪いということではなく、海外ではいろいろな団体が「ドネーション(募金を)してください」と言って、人々もたくさんの寄付先の選択肢を持っています。日本でもふるさと納税があるように、寄付先にも多様性を持った方がいいと思って、6年以上発信し続けてきました。僕の著書『ボランティアの教科書』でも訴えてきましたが、一向に流れは変わりませんでした。それが今回、南葛SCが風穴を開けてくれたと思っています。 1月の初めに南葛SCさんがスタジアムでイベントをする際に、募金をお願いしたんです。通常、そういうスポーツクラブが公共の場で行う募金をお渡しする先は行政か日本赤十字社の二択になると思いますが、いつもお世話になっている岩本義弘GMにお願いして、運営部長のえとみほ(江藤美帆)さんにつないでもらい、相談を重ねて複数の候補から3つを選んでもらいました。寄付額は合計27万円で、9万円ずつ3口を3つの団体に贈っていただきました。 ――お互いの信頼関係があってこそ、ですね。3つの団体はどのような基準で選んだのですか? 角田:僕は前出の小さな団体を推薦しましたが最終的に「Yahoo!JAPANネット募金」の候補に入っている団体から選ばれました。ヤフーは日赤一択ではなく、いろいろなボランティア団体を支援していて、厳しい審査を受けて認められた団体が名を連ねています。今回、南葛SCさんからの支援金はその審査に通っている3つの団体に送られました。 「ちょんまげ隊が選ぶ団体に募金をするなら利益供与じゃないか?」と思われたら困るし、過去には「普通は日本赤十字でしょ」というご意見もありました。もちろん、数百万円、数千万円レベルの大きな額なら話は別です。日本赤十字社のように大きな団体や県などに寄付した方がいいと思います。ただ、そこから末端の支援者に届くには数カ月かかってしまうことがあります。小さな団体だからこそ、「私たちの活動を知ってくれている人がいる。支援してくれる人がいる」と思えば、モチベーションは爆上がりです。こういう状況を理解し被災地に早く支援がいくように選択してくれた南葛SCさんには感謝しかありません。さらに今回、子どもたちのバスツアー招待にもご協力いただきました。