米軍にどこまで協力? 行動範囲は? 「安保法制」4つのポイント
2014年7月に閣議決定された安全保障法制に関する新方針は、日本は個別的自衛権を行使できるが、集団的自衛権を行使することはできないという従来の憲法解釈を変更して、厳格な要件を満たす場合には行使も可能にしました。現在、その方針に従って関連の諸法律を改正する準備が進められています。 【図表】集団的自衛権など安全保障めぐる「15事例」とは?
多国籍軍・米軍にどこまで協力する?
第1に、いわゆる多国籍軍や米軍にどの程度、また、どのように協力するかという問題に関する改正です。2001年9月の米国における同時多発テロ事件の後、アフガニスタンにおいて米国をはじめ多数の国がテロ集団やそれを保護していたタリバン政権と戦いました。また2003年には大量破壊兵器を開発・保有しているとみられたイラクに対する戦争が行われました。日本は戦争に巻き込まれてはならないので、自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限りながら輸送、医療、給油などの面で協力しました。 しかし、アフガニスタン、あるいはイラクというように個別のケースごとに法律を作るのでは時間的に後れを取ることとなる恐れがあり、また、日本として一貫した姿勢で臨む上でも問題があります。そこで新方針は、恒久法を制定して、「非戦闘地域」としてあらかじめ設定された安全な地域に限定するのでなく、「現に戦闘行為を行なっている現場では支援活動は実施しない」という原則により対処することにしました。平たく言えば、以前は自衛隊が活動できる地域をポジティブリスト的に指定していたのを、新方針は活動できない地域をネガティブリスト的に示した、と言えるでしょう。
自衛隊が行動できる地理的範囲は?
第2に、自衛隊が米軍と協力して行動できる地理的範囲についての改正です。元来、日米安保条約の下で自衛隊が米軍と協力できるのは「日本の施政下にある領域」、つまり、日本の領域だけでしたが、冷戦終結後のアジア太平洋の状況にかんがみ、1999年の「周辺事態法」は、物品や役務の提供、あるいは捜索救難など限られた範囲の行動であれば日本周辺の公海上でも可能にしました。 閣議決定された新しい方針はこの問題に特に言及していませんが、集団的自衛権の行使についての考えが変わった結果、日米の協力を「周辺事態」に限定する必要性はなくなるでしょう。したがって、日本周辺に限らず、どこでも米軍に協力できるようにする法律が周辺事態法に代わって制定される可能性があります。 また、集団的自衛権を行使するには、地理的範囲の拡大のみならず、自衛隊の行動基準を、「存立事態」などと閣議決定された要件に見合ったものとする必要があり、自衛隊法など関連の法律の改正が行われる可能性があります。