アメリカ流丼の可能性は無限大 米国の食生活に根付きつつあるボウル専門店
ボウル専門店をあちこちで見かけるようになった。米国の丼物は、ポケボウルから始まる。元々ポケはハワイの伝統料理で、寿司飯、生魚、トッピングをボウルに盛り付けたハワイ風のちらし寿司だ。今では生魚が入っている必要はなく、もっと自由な発想でオリジナルのアメリカ流丼が考案されるようになった。 アメリカ流丼の基本は、ベース+タンパク質+野菜類+トッピング、そして、味の決め手になるドレッシング(たれ)。この基本公式に沿って食材を組み合わせればいい。これだけボウル物がポピュラーになったのは、応用が利くこと、便利なこと、バランスよく栄養を取りやすいこと、たれさえ変えれば自在に味を変化させられることが挙げられる。 ベースは白米か玄米だが、レンズ豆、ダイエット向きにはカリフラワーライス(カリフラワーを細かくしたもの)、あるいはミックスグリーンで具だくさんサラダに仕立てる選択肢を加えているところもある。タンパク質は、調理した肉類、魚類、豆類、豆腐、卵など。そして、ニンジン、ケール、ブロッコリー、グリンピース、セロリなどの野菜類をのせ、クルミ、ピーナツなどのナッツ類、パンプキンやサンフラワーなどのシード(種子)類を振りかけ、最後にタレをかける。アメリカ風オリジナル丼の可能性は無限にある。 最大のポケ・チェーン「ポケワークス」は、ポケの知名度がハワイ以外ではほとんどなかった2015年に創業して以来、現在までに約70店舗をオープンしている。「ポケ・バー」「アロハ・ポケ」「ポケ・ブラザーズ」などのチェーンのほか、ニューヨークでは「ポケ・ライス」「チカラシ」「レッド・ポケ」などの個人店も増えてきている。 ポケはファストカジュアルの成長株の一部門となり、米国の食生活に根付くとみられている。そして、このトレンドを受けて、一般のレストランのほか、フライドチキンのKFC、シーフードの「レッドロブスター」、サンドイッチの「パネーラ・ブレッド」、ピザの「パパ・ジョンズ」や「カリフォルニア・ピザ」、メキシコ料理の「チポトレ」などのチェーン店が、それぞれオリジナルのボウルをメニューに入れ始めている。 例えば、メキシコ料理のタコス専門「バータコ」では、ごま醤油でマリネしたリブロース、ピーマンと玉ネギのスライスにピリ辛キムチを添えた玄米ご飯丼、「レッドロブスター」では、ショウガ醤油風味のサーモン、カリカリに揚げた芽キャベツと玉ネギ、サラダ野菜のミックスをのせ、ごまのたれをかけたオルゾー・ライス丼、サンドイッチ専門の「パネーラ・ブレッド」では、醤油ベースの照り焼きチキンとブロッコリーをのせたキヌアとコリアンダーライム玄米丼などをメニューに載せている。 ボウル専門のチェーン店、「マイティ・ボウル」の丼メニューは、東京、ソウル、上海、サイゴンなど都市の名前をつけている。「東京丼」は、照り焼きチキンにネギやマッシュルーム、落とし卵、キュウリサラダを添えている。「ソウル丼」は、ステーキにキムチ、ネギ、モヤシ、キュウリサラダを添え、鰹節とごまを振ってコチュジャンソースをかけたステーキ丼だ。 しかも、アメリカの丼物は見た目が麗しくなければならない。ラディッシュやビーツの赤、コーンの黄色、グリンピースの緑などを少し加えるだけで、一気にカラフルになる。目と舌で愛(め)で、「必要なのはヘルシーな丼一つだけ」といううたい文句の通り、いろいろな栄養素が一気に取れてヘルシー。今後も米国の食生活に普及していきそうな気配だ。
日本食糧新聞社