ウクライナ、ロシア軍の北東部侵入で緊急態勢-進軍止めたと大統領
(ブルームバーグ): ウクライナ北東部での1週間にわたるロシアの攻勢に危機感を抱いたゼレンスキー大統領と軍司令官らは、防御の強化を急いでいる。
ゼレンスキー氏は向こう数日間の外遊予定を中止し、16日はロシアの激しい攻撃にさらされている国内第2の都市ハルキウで主要司令官らと会談した。ロシア軍はウクライナ領内の最大10キロまで侵入したが、ウクライナは第一の防衛線でこの進軍を止めたと、ゼレンスキー氏が同日夜の記者会見で説明した。
「ウクライナの防衛軍はロシア軍を今いる地点でとどめた」と同氏は述べた。
中国を訪問中のプーチン・ロシア大統領は17日、ハルキウを占領する計画はロシアになく、ウクライナによる越境攻撃を防ぐための緩衝地帯設置に取り組んでいるのだと主張した。
ロシア軍はハルキウ制圧に必要な戦力を持っていない様子だが、この攻撃は、兵士や防空、弾薬不足に苦しむウクライナの長い防衛線に対する圧力を強めている。
カボリ北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官は16日、ブリュッセルで2日間にわたり開かれたNATO国防相会合を終えた後で記者団に対し、「戦略的な突破に必要なだけの数がロシア軍にはなく」、そのような部隊を創設している示唆もないと指摘。
「突破があるとしても、それを戦略的な優位として利用するために必要な規模で作戦を展開する能力や技術をロシアは持っていない」との見解を示し、「ウクライナ側とは緊密に連絡している。ウクライナは踏みとどまると確信している」と語った。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)陸戦担当主任研究員のジャック・ワトリング氏によると、ウクライナを攻撃するロシア軍の兵力はいまや50万人を超え、「有意な」数的優位を生んでいる。
ロシア軍の司令官らは、1000キロに及ぶ前線を抱えるウクライナ軍を分散させようとしている可能性があると、ワトリング氏は分析。その結果生まれる弱点を突こうとしているかもしれないという。ウクライナ北東部のハルキウ方面での攻勢に続き、南部のザポリージャ付近でロシアが攻撃を仕掛けてくる可能性があると同氏はみる。これによりウクライナの予備兵力が東部のドンバス地方から離れれば、そこでロシアが大攻勢をかけることもあり得る。