「9月の悪夢」で優勝どころかCS進出も逃した新井カープ、経営視点で見る"根本原因”とは? 「急場しのぎ」の組織運営は遅かれ早かれ瓦解!
こうした急場しのぎの対照として、横山氏は落合博満氏が監督を務めていたころの中日ドラゴンズについて話す。 落合氏は8年の在任期間中すべてでドラゴンズのAクラス入りを果たし、そのうち2010~2011年の連覇を含み4回のリーグ制覇、2007年には日本一になるなど輝かしい成績を残した。 横山氏によると、ドラゴンズにこうした黄金期をもたらした原点は、2004年の春季キャンプにあるという。 ■準備段階から本番を想定して取り組み、黄金期を呼んだ
落合氏は同キャンプで、初日から紅白戦を行う異例の判断をした。プロ野球は2月1日にキャンプインし、そこから実戦を交えつつオフシーズンで休めた体を再び鍛え直し、春に始まるペナントに備えていく。 とはいえ、初日から実戦形式で紅白戦を行うのはかなり異例のことだ。落合氏はこの狙いについて、自身のYouTubeチャンネルに投稿した動画で次のように話している。 「球団は数億円をかけて秋季キャンプの準備をする。そこでせっかく経験を積んでも、その後の12月と1月に遊んでいては、無駄になってしまう。そこで、一つの宿題(2月1日のオープン戦)を出した」
キャンプの最初から選手たちに「仕上がり」を求めることで、秋季キャンプ以降を無駄にしないようなシーズンオフを過ごしてもらおうとしたわけだ。その結果、キャンプ初日から140キロ台を出す投手も多く、「仕上がりはよかった」と落合氏は振り返る。選手たちが紅白戦に備えて体を作ってきたことで、「4勤1休」が主流だった中に「6勤1休」というハードな日程のキャンプも継続できた。 この6勤1休は、月曜日以外に試合があるという、ペナント開幕以降の日程と同じものである。キャンプという、一種の「準備段階」から「本番」を想定して調整したことが、間違いなく監督1年目からドラゴンズが優勝し、その後の黄金期を築くことになった一つの要因といえるだろう。組織を強くするには、これくらいの戦略的思考が要るということだ。
後編の記事ーなぜカープは「非合理的な盗塁死」を繰り返したか 「伝統を重んじすぎて失敗」は企業でも存在するーでは、今季のカープの特徴とも言える「日替わり打線」や、「無駄な盗塁死」を、ビジネス的な目線を交えながら考えていきたい。 ■期待、興奮、熱狂、転落、地獄…筆者の1年間
鬼頭 勇大 :フリーライター・編集者