津田健次郎、映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』ウルフ役は「嫌われながらも愛されるキャラクター」とニヤリ。神山健治監督は「情熱が注ぎ込まれたフィルム」と自信
「東京コミックコンベンション2024」(東京コミコン2024)2日目となる12月7日に、映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』スペシャル・プレゼンテーションが開催され、幕張メッセのメインステージに津田健次郎、神山健治監督、製作のフィリッパ・ボウエン、ジョセフ・チョウが登壇した。 【写真を見る】「東京コミコン2024」で映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(12月27日公開)をアピールした津田健次郎、神山健治監督、製作のフィリッパ・ボウエン、ジョセフ・チョウ 映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(12月27日公開)は、J・R・R・トールキンの小説をピーター・ジャクソン監督が実写映画化したファンタジー大作「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の前日譚を描く長編アニメーション。 小説「指輪物語 追補編」の騎士の国ローハン最強のヘルム王についての記述をもとにしたオリジナルストーリーで、偉大なるヘルム王からに護られてきた誇り高き騎士の国、ローハンの運命を託された若き王女ヘラが国民の未来を守るべく、かつてともに育った幼なじみでもある最大の敵・ウルフとの戦いに身を投じていく姿を描き出す。 実写3部作で手掛けたピーター・ジャクソンやフラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエンがプロデューサーとして参加。監督は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズの神山健治が務め、日本語版ではヘルム王を市村正親が、王女ヘラを小芝風花が、最大の敵となるウルフを津田健次郎が担当している。 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(03)から20年の時を経て誕生したシリーズ最新作をアニメーションで制作することになった経緯について、ボウエンは「最初に最新作の話があったのは2019年頃。この膨大な物語のどのパートを映像にするのか、アニメにはいろいろな表現があるのでなかなか話は進みませんでした」と振り返る。アニメーションのアイデアに「きっと私たちが”NO”と答えを出すと思っていたのかもしれません」と話したボウエンは「私たちのなかに(“NO”の選択)はなかった。『(アニメーションの)可能性はある!』と答えた時に、『ローハンの戦い』の物語が頭のなかに降りてきたんです」とニッコリ。このパートを選んだ理由は「日本のストーリーで描かれる勇気、名誉、忠義、その対になる裏切りなどと合うと考えたからです。人間としての短所なども描かれています」と、日本で制作することとの親和性に触れていた。 誰もが知っている作品の最新作の監督を務めることについて神山監督は「内心では踊り出したくなるくらいうれしかった」とニヤリ。しかしその気持ちは表には出さないようにし、「難しい挑戦になるかもしれない」などと反応していたそう。特に大変そうだと感じたのは騎兵隊の表現だそうで、「アニメーションでは騎馬の合戦を映像化したことはないはず。日本では黒澤明監督が『影武者』の時に初めてやっているはず。これをアニメで作るのは不可能とも思いました」と指摘。とてもすてきな物語だけど、作れないものを受けてもムリとも考えたそうだが、「日本のアニメを作っている人たちを代表してでも受ける仕事だと思った。ここまで培ってきたデジタル技術、モーションキャプチャー、CGなども使ってやれば手書きのアニメーションでもどうにかなるんじゃないかなと」と並々ならぬ覚悟で引き受けたとし、モーションキャプチャー、3DCG、手書きのアニメーションなどさまざまな手法を凝らしたことからも「3年間で3回監督した気分です」と、体感を解説し笑わせていた。 完成形の映像を観たばかりという津田は「アフレコの時に多少映像を見ているのですが、完成形はすごい!仕事終わりでとても疲れていたのですが、疲れが吹っ飛びました(笑)」とニコニコ。「画面に釘付けになり、改めて良い作品に出演させていただいたなと思いました」と感想を伝え、「背景とか結構びっくりすると思います」とおすすめ。実写のように美しい映像美だったとも話していた。 ウルフ役については、「ネタバレにならないようにしないと…」と隣に座った神山監督に小声で確認する一幕も。「基本的には主人公の敵役だけど、ただの悪役ではない。ワイルドでたくましいけれど、ちょっと、いや、結構弱さを含んでいます。すごく欠落した男。登場人物のなかで最も人間くさいキャラクターだと思います」と説明し、「監督は嫌われると言ってたけれど、僕自身は嫌われながらもすごく愛されると思います」と魅力を伝え、期待も込めていた。 ネタバレを気にしていた津田にボウエンから「ウルフは、(主人公の)ヘラのことを心から愛していたと思いますか?」との質問が飛ぶ場面も。「ちょっと答えるのが怖いな…」と複雑な表情を浮かべた津田は自身の解釈と前置きした上で、「愛があったと思います」と回答。その回答にボウエンは大きく頷き、親指を立てて喜ぶなど、チャーミングなやりとりで会場を沸かせた。 最後の挨拶で神山監督は「たくさんアニメーションを作ってきたけれど、このスケールは初めて」としみじみ。「作っている自分も驚くくらいのクオリティと作り手たちの情熱が反映されたすばらしい映画です」と胸を張り、「観てもらいところはたくさんある。一つに絞りきれません。情熱が注ぎ込まれたフィルムなので、映画館で観てください」と呼びかけ、日本語版、英語版の両方を楽しんでほしいとも強調し、大きな拍手に包まれながらステージを後にした。 取材・文/タナカシノブ