「母ではなく個人として接したい」3児の母の杏が子どもたちに伝えたい“ちょっと難しい話”
虐待を受けている子どもを目の前にした時、自分に何ができるのか。ヒューマン・ミステリー『かくしごと』で、社会のルールも人の目も関係なく一人の子どもへの愛を貫こうとする女性、千紗子を演じたのは、自身も三人の子育て中の杏さんです。日本とパリを往復する暮らしぶりや、今回の作品で感じたことなどを語ってもらいました。 【画像】子どもとの時間について話す杏さん。
個人として子どもたちと接したいなと思っている
――『かくしごと』では、他人である少年に深い母性愛を注ぐ千紗子を演じたわけですが、杏さんご自身はどのようにお子さんたちと向き合っていますか? 最近私は、母という部分はあえて抜いて、個人として子どもたちと接したいなと思っています。母親だからといって私の言うことを絶対的に聞いてほしいとは思わないし、私が間違っていたら正してほしい。だから、ちょっとずつ自分のことを「私」って言うようにしているんです。「お母さんはこう思うよ」とかじゃなく。 必ずしも私が言っていることが正解かどうかは、誰も決められないし、分からない。今の常識も50年たったら違っているかもしれない。ちょっと難しい話にはなっちゃうんですけど、ここだけが世界のすべてじゃないよっていうのは、繰り返し伝えたいなと思っています。 ――杏さんにとっても、お子さんとの時間だけが全てではない? そうですね。仕事の都合などで、1週間ぐらい一人で日本に帰ったりすることもあって、それもお互いにとって良い距離感につながっている気がします。三人の子どもたちは年齢的にお団子状態なので(笑)、そういう意味では寂しさも軽減しているのかなとも。 私自身も仕事の合間にマッサージとかに行ってセルフケアしたり、友だちと会ったり、子どもと一緒に帰国する時とは違う過ごし方ができています。一時期の子育てでワーッてなっていた時期から、ちょっと落ち着いてきたかな。 ――とはいえ、映画の長期ロケが入ったりすると大変ではありませんか? 今回は神奈川と長野でロケがあったので、もちろん例外もありましたが、神奈川の時は子どもたちを送り出してから撮影に行って、できるだけ彼らが寝る前には帰れるように、スケジュールを組んでいただきました。 長野でのロケには、ちょうど夏休みだった子どもも連れていきました。友だち家族も一緒に来てもらって、撮影がない時はみんなで高遠そばを食べに行ったり、花火大会を見に行ったり。本当に景色がきれいだったので、いい具合にオン・オフを切り替えて日本の夏を満喫しました(笑)。