地下アイドルのマネジャーを副業に選んだおじさん、どこで稼いでいるのか?
■ 「太客=TO」が一人いればマイナスにはならない チェキとは、富士フィルムから発売されている、撮った写真がその場でプリントされるインスタントカメラのこと。ファンが1枚1000~2000円を払い、「推し」と一緒に写真を撮る撮影会は、地下アイドルライブの定番である(CDを購入してくれたファンだけ撮影という場合もある)。 「チェキの撮影代1000円のうち、アイドルの取り分は200円ほど。チェキの原価は1枚あたり80円くらいですから、残り700円が事務所の利益です」 他のグループとの合同ライブは、50人程度のファンが集まる。ファンたちはアイドルとの関係を深めるため、競うように撮影の列に並ぶ。 中でも列の先頭に並ぶ「鍵開け」と呼ばれるファンと、一番最後に並ぶ「鍵閉め」のファンは、最低10枚は撮影する「太客」でなければならないという、地下ならではの暗黙のルールがあるという。 「太客=TO(トップ・オタ)ってやつです。他のファンよりお金を使ってマウントを取りたいという心理ですよね。そういうファンが一番お金を落とします」 太客のお陰で無名の地下アイドルでも、チェキだけで月に数十万円の売り上げにはなるそうだ。無給の「マネジャー」Dさんにも、チェキでは臨時収入があった。 「フィルムを大量に買うので、多い月はヨドバシカメラのポイントが5万円分くらい貯まります。2年間で20万円分は貯まりましたよ」 ほかにもDさんには、いろいろな収穫があったという。 「地下アイドルには太客が一人いればマイナスにはならないし、5~6人いればお小遣い程度になるとわかりました。YouTubeで稼ぐのは宝くじみたいなものです」 Dさんはいずれ新たなアイドルを自分で発掘して、次なるタレントとして売り出したいという野望を抱いている。
■ 「招待バイト」ってなんすか? もう一人、地下界隈で「招待バイト」なる副業を始めた中高年男性に出会った。 「面白そうな副業を探していろいろやっています。招待バイトは、地下アイドルのライブに行くだけで5000円もらえるんです。これは美味しいと思って始めました」 こう話すのは大手企業でSEをしているEさん(49・既婚)。彼もアイドルにはまったく興味がないという。 彼が取り組む「招待バイト」とは、何なのか。 「地下アイドルが単独ライブで1000人以上のキャパを埋めなきゃならない時に、『招待』という枠を作って、熱烈なファンに客を集めてもらう仕組みがあります。客を集めたファンには、集めた客数に応じて特典が与えられるのです」 例えば、10人の客を連れてきたファンにはアイドルのレッスン見学ができる、30人連れて来ると同プリ(一緒にプリクラを撮れる)、100人連れて来ると2時間デートなどの特典があるのだという。 「客を50人~100人集めるには、お金を払って来てもらうのが手っ取り早い。ファンは推しのために一人あたり3000~1万円の報酬を払って、50人とか100人もの客を動員するわけです」 つまりDさんの仕事は、太客に雇われたサクラである。まるで金を払って人を動員する選挙活動みたいだな(それは違法だが)。 EさんはX(Twitter)やジモティなどでこうした「地下の招待バイト」を探す。確かにSNSを覗くとこうした募集が出てくる。 Eさんはこれまでに10回の招待バイトに参加した。そのうち8割は、「メン地下(メンズ地下アイドル)」と呼ばれる男性アイドルが登場するものだった。 それにしても中年のおじさんが、好きでもない男性アイドルのライブを見て楽しいのだろうか。 「珍しいので新鮮ですよ。どのライブ会場でも、後ろの方に座り込んでボ~ッとしている人が数十人いますが、たぶん招待バイトの人です。僕は一応、ライブを楽しみますが、疲れたら後ろに避難します」