焼酎、ワイン、ビール…お酒にまつわる「あの都市伝説」はウソだった!「アルコール」と「糖尿病」の根深い関係
ジェットコースターで結石を出す、うんちを移植してガンや認知症を治す、万引きや虐待の時に活性化する脳の部位がある…。こうした研究は実際に存在するものです。 【写真】性の先進国スウェーデンに学ぶ「幸福な”夜”の過ごし方」 そして、最先端の研究分野ではこのほかにも身体や病気について次々と新しい事実が明らかになっています。そんな“人体の話”をまとめたのが『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました』。 Xのフォロワー22万越えの大人気ニュースサイト「ナゾロジー」の協力のもと、岡山大学大学院教授の中尾篤典氏と脳神経科学者の毛内拡氏が解説します。(※本記事は同書の一部を抜粋・編集したものです。)
お酒に強い人は糖尿病になりやすい!
肥満に関わる誤解をもうひとつ解いておきましょう。糖尿病についてのお話です。 糖尿病と聞くと、お腹が出た肥満の人、不摂生な人がなる病気というイメージがありますが、これは誤解です。例えば、日本人を含む東アジア人は肥満でなくても糖尿病になりやすいことが知られています。 さらに最近、お酒に強い人が持つアルコールをどんどん分解できるALDH2(2型アルデヒド脱水素酵素)遺伝子が、男性の2型糖尿病の疾患感受性遺伝子であることがわかりました。これはつまり、アルコールに強い男性は、本質的に糖尿病になりやすいことを意味しています。 糖尿病は大きく1型と2型に分けられます。1型糖尿病は、膵臓から出る血糖(血液の中のブドウ糖)の値を一定に保つ働きをするホルモン、インスリンが出なくなってしまいます。 その結果、高血糖状態が続き、血管がぼろぼろになり色々な臓器が傷んできます。なので1型糖尿病の患者さんは、血糖値を一定に保つインスリン注射が必須になります。 一方で、2型糖尿病は、インスリンは分泌されているものの、働きが悪くて血糖値が下がらない場合(インスリン抵抗性)や、分泌そのものが減っている場合(インスリン分泌障害)があります。 遺伝的な要因に運動不足や食べすぎなどの生活習慣が加わって発症すると考えられています。はっきりとした原因はまだわかっていませんが、糖尿病患者の95%以上が2型といわれていて、中高年に多く発症します。 インスリン抵抗性の原因のひとつとして肥満があります。 しかし、日本人のインスリンを分泌する能力は欧米人に比べて低く、そのためたとえ太っていなかったとしても糖尿病になってしまうことがあります。 実際に日本を含む東アジアの国々では、2型糖尿病患者であっても肥満の程度はそれほどではありません。平均体格指数(body mass index; BMI)は25kg/平方メートル未満であることが多く、東アジア人の遺伝的素因が関係していると考えられてきました。