石川県耐寒継走不参加一転連覇目指す 門前出身・林さん 震災犠牲、亡き同級生の法要で決意
能登ゆかりのランナーは県耐寒継走選手権に特別な思いで臨む。前回大会の1部(男子選手権)で優勝したジュピターRCからは、不参加のつもりだった輪島市門前出身の林太志さん(43)=金沢市朝霧台=が、意向を一転させて出場する。きっかけとなったのは、地震で亡くなった同級生「のんちゃん」の法要だった。「優しかった彼女の記憶を風化させない」と連覇を目指す。 20~70代の男女約120人が所属するジュピターRCは、男子、女子、男女混合の各部門に計6チームが出場する。林さんが所属する1部のチームは4連覇中で、前回大会でも林さんはメンバーの一員だった。 出場者の多くは年末、練習や調整に追われる。大学3年から約20年間、ほとんど欠場しなかった林さんだが、家族との時間も大事にしたいと、今年の優勝を機に「卒業」を決めた。 考えを変えたのは「のんちゃん」こと神崎希美さん=当時(43)=への思いだ。神崎さんは高校卒業後、地元を離れて金沢の大学に進学、就職した。正月には帰省し、昨年末も門前の実家に帰ってきた。元日、祖母の美智子さん=当時(87)=、帰省中だった妹の麻衣子さん=同(40)=とともに、家屋の倒壊で命を失った。 12月14日に門前で営まれた法要には松風台小、門前中を卒業した同級生も参列。林さんのランナーとしての活躍は同級生に伝わっており、話題になった。帰り際、林さんは神崎さんの母智子さん(67)を前にすると、自然と「元日も頑張ります」と口にした。智子さんからは「頑張って」と笑顔で励まされた。 「思ってもいなかったことを言った」と苦笑いするが、門前中3年の時、校内マラソン大会で優勝した林さんに「おめでとう」と声を掛けた神崎さんの面影が浮かんだという。 神崎さんの家族や同級生に背中を押され、「のんちゃんのことを知ってほしい。忘れてほしくない」と力を込めた。 ●田鶴浜町の一花さんも出場 金沢マラソン初代覇者 ジュピターRCの1部のチームには、金沢マラソン第1回覇者の一花建さん(34)=七尾市田鶴浜町=も名を連ねる。 七尾市内の子どもに陸上を指導する一花さんは今年の元日、耐寒継走で優勝後、市内の神社を詣でて被災した。練習が十分にできない時期を乗り越えて出場した今年の金沢マラソンでは、足の裏の皮が破れ、激痛に耐えて完走。9位の結果を出した。 一花さんは「大会に出られること、走れることは当たり前じゃない。一つ一つ大切に、感謝の気持ちで走りたい」と意気込みを示した。