韓国初の現職大統領取り調べへ攻防加速 複数捜査機関が尹氏へ出頭要請
【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日に宣布し、国会などに兵力を投入した「非常戒厳」について捜査している捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」や警察などでつくる捜査本部は16日、内乱容疑で尹氏を取り調べるための出頭要請に着手した。検察も16日、尹氏に2度目の出頭要請書を送ったことを明らかにした。 複数の捜査機関が尹氏の捜査の主導権を争う異例の展開となっている。尹氏が出頭すれば、現職大統領が内乱の容疑者として取り調べられる初のケースとなる。出頭拒否が続けば、捜査当局が令状を取り、身柄を確保する可能性もあると、韓国メディアは伝えている。 公捜処などは16日、大統領府や公邸に18日の出頭を求める文書を届けようとしたが、警護部署に拒まれた。同様の文書を郵送した。検察は11日に15日の出頭を要請したが、尹氏は応じなかった。「弁護人の選定が終わっていない」と説明したという。16日にも新たな要請書を送った。要請した出頭日は不明。検察は16日、軍の司令官2人を新たに逮捕するなど、捜査を加速させている。 国会での14日の尹氏の弾劾訴追案可決を受け、弾劾審判を担う憲法裁判所は16日、最初の弁論準備手続きを27日に行う方針を決めた。憲法裁は「この案件を最優先で審理する」と説明した。 与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は16日、記者会見し、辞任を表明した。韓氏は戒厳を正当化する尹氏の弾劾賛成に転じた。与党議員の大半が反対する中、一部与党議員の賛成で弾劾訴追案が可決されたことで、与党の分裂が決定的となった。