「NMB時代のやり方」では越えられない壁が次々と……山本彩が歩む“自分だけの道”を切り拓く旅
活動休止という転機――立ち止まることの意味
すべてを止めるという決断は、彼女にとって簡単なものではなかった。しかしその期間は、これまでの活動を見つめ直し、自分と向き合うための貴重な時間となった。 「本当にいろいろなことがありましたね(笑)。来年は厄年なんですが、正直もう個人的な厄年は終わったんじゃないかと思うくらい、大変な時期をなんとか通り抜けたという感覚があります。今は少し肩の力を抜いて、気楽にやれているような気がします」。 休止中、彼女は「このまま戻らなくてもいい」「違う道もある」と自分の選択肢を広げてみた。その結果、自然と「歌いたい」「またライブがしたい」という気持ちが湧き上がり、活動再開の決意を固めたという。
休止期間で得た新しい気づきと現在の心境
活動休止を経て、山本は「こうでなければならない」というこだわりを手放し、自分が本当に歌いたいものや、書きたいことを大切にするスタンスへと変化した。 「それからは、『こういうアーティストでなければ』という意地を捨てて、もっと自由にやればいいと思えるようになりました。それがすごく楽になったんです」。
創作活動を続ける中で、山本には常に向き合わなければならない課題がある。それは、「考え込む自分」とどう付き合うかということだ。 「正直、そこは全然変えられていないんですよ(笑)。でも、『変わらなきゃ』と思うほど、逆に苦しくなることもあって。だから、変われない自分がいてもいいんじゃないか、と考えるようになりました。それが意外にも、自分を助けてくれることもあるんですよね」。 性格を無理に変えようとせず、むしろその一面と共存しながら歩み続ける。それが、山本が見つけた自分らしい向き合い方だ。彼女は自己対話を重ねる中で、ある重要な気づきを得た。
「俯瞰するもう一人の自分」――創作の源泉
「私の中には、どこか俯瞰している自分がいて、まるで『もう一人の自分』が山本彩という人間を使って表現している感覚なんです」。 その「俯瞰する自分」は、彼女の音楽に自由と多様性を与えると同時に、独自の世界観を築く原動力となっている。 「曲作りでも、『こういう曲を歌ったら面白いんじゃないか』という発想が強いです。『こういう歌を歌いたい』というより、誰かをプロデュースしているような感覚で作ることが多いですね」 彼女の音楽制作には、この「俯瞰する視点」が欠かせない。しかし、彼女は同時に、自分自身を見つめることの難しさにも向き合っているという。 「自分を見つめたり、自分を理解することは私にとって一番のハードルです。だから、素直な気持ちをそのまま書くのはすごく難しい。でも、物語やフィクションに置き換えると自然に書ける。そういうやり方が自分には合っているんです」。