1週間で文学賞をトリプル受賞、直木賞候補の注目作家が“漫画原作”として挑むミステリー×アクションの新境地「セリフの量のバランスが難しい…」
実は“追いかけっこ的”にシナリオを作っている
――そこまで考え方が違うと、小説と漫画を並行して書くのが難しくなりませんか? 今は小説の仕事がひと段落して漫画の仕事に集中しているんですけど、今年の初め頃は並行していました。だいたい昼頃に仕事をはじめて、夜の10時くらいに終えるという夜型の生活なのですが、昼から夕方6時まで小説、ちょっと休憩してそこから漫画を進めるみたいな。 ――時間帯で明確に分けていたのですね。 そうですね。でも、頭の切り替え方よりも、漫画週刊誌での連載自体がすごくプレッシャーになっています。自分の作品が“連載陣の1つ”になることがはじめての経験ですし、しかも憧れの「ヤングジャンプ」ですからね。 ――先生にとって、それはポジティブな要素ですか? ネガディブではないですけど、常に緊張感があります。小説を書いているときは一人で勝手に走り回っていただけですけど、トップクラスのマラソンランナーたちの中に放り込まれてしまって、どこまで走り続けられるだろうか…という感じです。 ――それは連載を”続けられるか”という意味でですか? それもありますが、実はシナリオのストックがあまりなくて、“追いかけっこ的”に作っているので、どこまで止まらずに続けられるかなと。 ――勝手ながら、作風的にラストまで緻密に設計されているのかと…。 『ガス灯』に関しては編集者さんからのフィックスが入ることもふまえて、比較的余白の多い状態で作っています。ライブ感を重視したほうが漫画としては面白くなるだろうという確信みたいな部分もある。 もちろん僕の頭の中では大枠は決まっていますけど、その大枠自体、表には出していないし、松原先生にも担当さんにもちゃんとは話していません。 ――そうなんですか! 連載がスタートしたときも、きちんと固まっていたのは3話分くらいです。あとはメインキャラの簡単な設定ぐらい。松原先生も、どうするんだこれ、って思っていたと思います。もしかしたら今も思ってらっしゃるかも(笑)。 取材・文/関口大起 撮影/恵原祐二
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