3兄弟でセンバツ出場の敦賀気比・米満晴 兄は「雲の上の存在」
第94回選抜高校野球に出場する敦賀気比(福井)の遊撃手・米満晴(はる)=3年=には、ずっと背中を追っている家族がいる。2013年センバツで、敦賀気比が4強入りした時のメンバーだった兄2人。「雲の上の存在」という兄たちのようにと、努力を重ねてきた。 【松坂も、藤浪も歓喜】写真で振り返る優勝校 米満は堺市出身で4人きょうだいの末っ子。きょうだいは足が速く、スポーツが得意だ。9学年上の長兄の一聖(いっせい)さん(26)はパンチ力がある打撃が魅力で、13年センバツ2回戦の京都翔英戦では3ランを放った。8学年上の次兄の凪(なぎ)さん(25)もこの大会に代走で出場した。 当時8歳だった米満は、両親や姉の枝菜(えな)さん(18)ら家族とよく応援に訪れていた。兄のホームランを甲子園のスタンドから目撃したことは良い思い出だ。「球場が盛り上がり、『お兄ちゃん打ったぞ』とみんなに声を掛けられた。カッコ良かった」。敦賀気比のグレーのユニホームを着て、甲子園でプレーすることは憧れだった。 だが、兄を追って入学した高校生活は「プレッシャーしかなかった」と振り返る。中学時代は硬式野球チームの中心選手として全国大会にも出場したが、本人いわく「実力的には全然な選手」。有望な選手が集う敦賀気比で、入学当時に身長166センチ、体重52キロだった米満は目立たなかった。「米満の弟として、結果を残さないといけない。下手なプレーはできない」と心苦しかった。 それでも、負けるわけにはいかなかった。「『お兄ちゃんはあんなにすごいのに、お前はそんなもんか』と思われるのがすごく怖くて、そう思われたくなかった」 壁を破るヒントになったのは以前、兄たちから言われた「体を大きくしないとパワーがつかないし、試合にも出られない」という言葉だった。1年生の時から夕食後、寮のコーチの部屋に通い、体作りのために振る舞ってくれるパスタや焼き肉を食べた。既に満腹な状態で苦しかったが、大きくなろうと必死だった。 太りにくい体質だが、体重が増えるにつれてパワーがついて打力も向上した。いまは172センチ、65キロ。自信がなかった守りも足の運び方など基礎から見直した。派手さはないが、走攻守でチームに欠かせない戦力と認められ、昨秋の北信越大会から初めて背番号「6」を獲得。明治神宮大会では大阪桐蔭の好左腕・前田悠伍(2年)から右前打を放ち、インターネット中継を見ていた一聖さんから「良い流し打ちだった」と褒められた。いつもは厳しい兄の言葉がうれしかった。 一聖さんは駒大で主将、凪さんは奈良学園大で大学日本代表に選ばれ、ともに社会人野球に進んだ。米満は「どんどん手が届かない存在になっていく。自分には兄たちのように飛び抜けた何かがあるわけじゃない。総合力で勝負したい」と意気込む。センバツでの目標は「レベルアップした姿を見せること」。成長を披露し、自分の野球人生を切り開く。【石川裕士】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。