「遺族年金」改正の流れが強まっているけれど…いまさら聞けない遺族年金の“基礎知識”【CFPが解説】
「遺族厚生年金」の一部が問題視されているワケ
現在問題とされているのは、遺族厚生年金において子どもがいない場合において、支給対象年齢や内容に差が生じていることです。どのような差が生じているのか、わかりやすく表にしてみましたので参考にしてください。 ここでは、遺族基礎年金と合わせて比較するため、受け取れる人を第1順位である配偶者と子どもとして比較しています。また、妻も構成年金保険の被保険者と仮定します。 18歳未満の子どもがいる 18歳未満の子どもがいない 妻の死亡時に55歳 未満である夫 妻の死亡時に55歳 以上である夫 夫が死亡した妻 妻の死亡時に55歳 以上である夫 夫が死亡した妻 夫 子ども 夫 子ども 妻 子ども 遺族厚生年金 遺族厚生年金 (+中高齢寡婦 加算※3) 遺族基礎 年金※1 遺族厚生 年金※2 遺族基礎 年金+遺族 厚生年金 なし 遺族基礎 年金+遺族 厚生年金 なし ※1:55歳以下の夫には遺族厚生年金の受給権がありません。 ※2:すでに第1順位の夫が遺族基礎年金を受け取っているため、子どもには受給権がありません。 ※3:中高齢寡婦加算とは、夫を亡くした妻が以下のいずれかの要件にあてはまる場合に64歳まで受け取れるものです。 1.夫が亡くなったときの妻の年齢が40歳で子どもがいない 2.妻が40歳の時点で遺族基礎年金の受給権を持つ子どもがいたけれど、子どもが年齢要件を満たさなくなったため遺族基礎年金を受給できなくなった このため、20代~50代において、子どものいない夫婦の遺族厚生年金について、以下のように改正する動きが出ています。 夫が死亡した場合に妻が受け取る遺族厚生年金について、現在では5年間の有期給付となっているが、段階的に有期給付の対象年齢を徐々に引き上げる。妻が亡くなった際の男性の受給年齢要件を解消する。特に2の改正によって、男性も55歳になる前に遺族厚生年金が受け取れるようになれば、ひとり親としての生活の負担を抑えられるでしょう。 これらの改正についてはまだ正式に決まったわけではなく、段階的に時間をかけて施行するとなっているものの、有期給付に関しては適切に配慮するとされています。
具体的な改正内容が公表されるのは2024年12月
この改正の背景には、男女共働きの世帯が増えてきたことや、現在の遺族厚生年金の制度が、男性が収入の柱であることを基準として考えられていることから、現在の生活スタイルにそぐわなくなったことが挙げられます。 本記事で紹介した改正案以外にも、「生計を維持されていた遺族の収入要件や支給対象者、中高齢寡婦加算の見直し」、「同性のパートナーも支給対象に含める」、「遺族年金について、現状の非課税から課税対象とする」などの声が上がっています。 具体的な改正内容については2024年12月に公表される予定ですので、その後の動向に注目しておきましょう。 新井智美 トータルマネーコンサルタント CFP
新井 智美