肺がん新薬の相次ぐ登場に「もう少し早ければ、あの患者さんも…」と切ない思いも
ステージ4でも薬物療法で普通に生活できる人も
――肺がん治療の近年の大きな進歩といえば薬物療法ですね。以前なら治癒が見込めなかった人が治るようになってきましたか。 すごい進歩です。患者の遺伝子変異を調べて、それに有効な薬があれば、ステージ4の人でも、治るというか、再発しない状態を保っていられるとか、がんが全然大きくならないという人が今では珍しくありません。 分子標的薬はがんを小さくするのがメインの効果なので、本当にがん細胞を殺しているかどうかわからなくて、10年ぐらい飲み続けているステージ4の人もいます。 免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボの場合、副作用が起こった人は1回か2回しか投与しませんが、そのまま何もせずに7、8年経過している人もいます。副作用をうまく乗り越えさえすれば普通の生活ができるということもある、ちょっと変わった薬ですね。 ――とはいえ、薬物療法の副作用はつらいものですか。 分子標的薬は、副作用のせいで減量や休薬をしないといけない人ももちろんいますが、一方で全くそれが必要ない人もいます。薬がよく効いている人なら血中濃度がある程度あがれば、薬を減らして副作用を最小限に抑えるようにしています。 ――治療法が進歩したとはいえ、肺がんは死亡率が比較的高いがんですね。 確かに、以前は難治がんと言われていて、5年生存率が10~20%という時代もありましたが、現在、非小細胞肺がんの5年生存率は四十数%ぐらいです。肺がんになったら絶望的というような時代はもう脱したかなと思います。 ――健康診断で胸部X線検査は広く行われていますが、それで早期発見できますか。 X線検査は骨と重なって見にくいところがあるので、がんがある程度の大きさにならないとわかりません。ですから、喫煙者でなければ、何年かに1回、CT検査を受けるのが、お金はかかりますが一番お勧めです。
つぼい・まさひろ
1987年、東京医科大卒。国立がんセンター中央病院勤務、東京医科大准教授、神奈川県立がんセンター呼吸器外科医長、横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター外科准教授などを経て、2014年より現職。