鹿児島県警「不祥事隠ぺい疑惑」ニュースサイトへの“家宅捜索”も…元生活安全部長の“告発“は、「守秘義務違反」か「公益通報」なのか?
「公益通報か情報漏えいか」が焦点、県警の捜査手法と情報管理に疑問
6月11日、鹿児島県議会常任総務警察委員会。この日、野川本部長が議会に出席し、「模範となるべき立場にあった元生活安全部長が、公表を望まない被害女性の実名などを第三者に漏らしたとして逮捕されたのは誠に遺憾」と述べ、「私が隠ぺいを図ったというような発言があったのは誠に残念。結果として県民に多大な不安を与えたことに県警の最高責任者として深くおわび申し上げる」と謝罪し、隠ぺいを否定した。 この騒動の焦点のひとつは情報漏えいか、それとも公益通報かだ。公益通報について取り扱った公益通報者保護法第2条には、以下のような定義がある。 「この法律において『「公益通報」』とは(略)不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく(略)、法人の経営に従事している者、従業員、代理人その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該役務提供先若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者、当該通報対象事実について処分、若しくは勧告等をする権限を有する行政機関若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者又はその者に対し、当該通報対象事実を通報することがその発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に通報すること」 一方、国家公務員法100条には「秘密を守る義務」として、以下のような規定がある。 「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」 これまでの報道を勘案すると、本田容疑者の事例はどう考えても不正をする目的ではないといえるだろう。また、本田容疑者が主張しているように「野川本部長が警察官の事件を隠ぺいしようとした」のが事実なのであれば、公益通報者として本田容疑者は守られるべきであったとも考えられるが、今も捜査は続いているため真相はわからない。 本稿記者の取材に応じた鹿児島県警は、「隠ぺいの有無は野川本部長が話した通り。さまざまな報道は承知しており、内部情報などの適切な管理に努めている」と回答。ハンターへの家宅捜索後、パソコン内のデータを削除したことについては「通常、資料などのデータを消すときは、許可をもらうはず」と答え、「証拠隠滅かどうかは回答を差し控える」とした。 なお、小笠原氏に届いた郵便物の内容や差出人の名前がなかったことなどは、読売新聞が今年6月7日付朝刊の社会面で報じている。情報の適切な管理に努めているのであれば、告発者と小笠原氏しか知りえないはずの内部文書の存在がなぜ読売新聞で報じられたのだろうか。疑問が尽きることはない。
小林 英介