鹿児島県警「不祥事隠ぺい疑惑」ニュースサイトへの“家宅捜索”も…元生活安全部長の“告発“は、「守秘義務違反」か「公益通報」なのか?
「闇をあばいてください」札幌在住のフリーライターに届けられた告発文書
4月上旬、北海道のとある人物宛てに、「闇をあばいてください」などと書かれた郵便物が届けられた。郵便物は5月31日に国家公務員法(秘密漏えい)の疑いで逮捕された本田容疑者が作ったものとされている。宛先の人物とは、前出の札幌市在住のフリーライター・小笠原淳氏だった。 小笠原氏は北海道小樽市生まれ。「札幌タイムス」記者などをへて北海道で発行されている月刊誌「北方ジャーナル」を中心に記事を執筆しており、「ハンター」でも記事を執筆している。小笠原氏の著書として『見えない不祥事 北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。北海道警察の不祥事について「情報公開請求制度」を活用して徹底的に洗い出し、粘り強く取材しているのだ。このような小笠原氏の活動は、今年1月末に発行された「記者のための情報公開制度活用ハンドブック」(日下部聡編著、報道実務家フォーラム企画協力・公益財団法人新聞通信調査会)でも取り上げられるなど、評価は高い。 ところで、なぜ鹿児島から北海道のジャーナリストに文書を送らねばならなかったのか。疑問が湧くのは当然である。 小笠原氏は前掲の書籍をはじめ、これまでの取材経験から警察事案に詳しく、県警の不正をハンターでたびたび執筆していた。以前からそれらの記事を見ていた本田容疑者は、小笠原氏にすべての望みを託し内部文書を送ったとみることができるかもしれない。実際、本田容疑者も弁護士を通じて「小笠原氏に書類を送れば、積極的に取材をしてもらえるかもしれない」とコメントしている。当の小笠原氏は、北海道テレビ放送(HTB)のインタビューに応じ、こう話している。 「現物の紙として文書の中身を見たことがあるのは今の時点で差出人と私だけ。誰もその現物を確認していないのになぜ(本田容疑者を)逮捕できたのか。ほぼ間違いなく公益通報の目的で文書を送ってきているわけで、これを犯罪にしていたら公益通報を考えている人たちは萎縮してしまいますよ」 文書には、以下の未発表事案3件が記されていた。 ①枕崎警察署の男性巡査部長が女性用個室トイレに侵入して盗撮しようとし、建造物侵入の疑いで逮捕 ②県内にあるとある警察署の男性巡査長が、業務を通じて入手した連絡簿を用いて一般女性の連絡先を不正に入手。ストーカー行為をはたらいた ③鹿児島中央署に勤務する男性職員が、2年ほど前に超過勤務手当を不正取得していた ※一部は全国ニュースで報道済み 本田容疑者は、これら事件のうち①について、「早く着手したい」と考えていたが、野川明輝鹿児島県警本部長は事件を起こした警察官に「最後のチャンスをやろう」と捜査の着手を先延ばししたと主張。②の事件も県民に説明するべきだと考えていたが、野川本部長は全く応じなかったとしている。すなわち、本田容疑者は、野川本部長が隠ぺいをしようとしたと主張しているのだ。