気球で成層圏へ 宇宙に挑む北海道企業
今週のけいナビは、北海道内の宇宙関連産業について取り上げる。番組MCの杉村太蔵さんが今回訪れたのは、江別に拠点を置くスタートアップの岩谷技研。ある驚きのサービスを提供しようと準備している。 そのサービスとは、気球による宇宙遊覧。空気よりも軽いヘリウムガスを充填(じゅうてん)した気球で、高度20キロ以上の成層圏到達を目指すというものだ。気球には2人から4人乗れるキャビンを設置。ことし7月に成層圏内での有人飛行に成功した。 この岩谷技研の創業者、岩谷圭介社長は38歳。北大で航空宇宙工学を学び2016年、30歳の時に会社を設立した。約90人の社員が働いている。 気球による宇宙遊覧サービスの料金は、1人当たり2400万円。高いと感じるかもしれないが、アメリカのスペースXが提供するサービスは2人で100億円とも言われており、それに比べると極めて安価だ。 キャビンの製造は全て自社の技術で、投資会社からの出資は受けているものの、国からの補助は一切ない。内部は、外からの影響を受けず常に一定の気圧を保てるようになっている。商用打ち上げの時期は、来春になる可能性があるという。
岩谷社長は料金について、「将来的にはゼロをひとつ取りたい」と話している。水面に降下することができる気球など、新たな製品開発に意欲的だ。 北海道内の宇宙関連企業の代表格は、大樹町に本社を置くインターステラテクノロジズだ。民間ロケットを国内で初めて宇宙空間に到達させた企業として、全国区の知名度を持つ。 そのインターステラ社が現在力を入れているのが、ZEROという人工衛星を宇宙空間へと運ぶロケットの開発だ。前回宇宙空間へと打ち上げたのは観測用のMOMOというロケットだが、ZEROはMOMOよりも大幅に大きく長さ約30メートル、直径は2メートル以上になるという。 去年2月にエンジンの燃焼実験に成功。ターボポンプという部材の試験にも成功していて、打ち上げに向けた調整が続く。今月には国内7カ所目、道内3カ所目の拠点として帯広支社を開設した。 そのZEROを打ち上げる巨大な射場を整備しているのが、同じ大樹町に本社を置くスペースコタンだ。射場は2025年度末の完成予定。同社は、民間の宇宙産業育成を目的に国が創設した宇宙戦略基金の活用を目指しながら、射場整備を今後も急ピッチで進めていくとする。
大樹町からロケットの打ち上げを目指す台湾企業もある。ロケット開発製造会社のTiスペースだ。台湾と地理的に近く、環境的に適した東側が開けた場であることから大樹での打ち上げを決めたという。この動きには、射場を整備するスペースコタンも期待を寄せている。 北海道から羽ばたこうとしている数々の宇宙関連企業。今後の動きが各方面から注目されている。 (2024年10月19日放送、テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)