「涙は箱根に取っておく」三冠王手の國學院大・前田康弘監督、箱根駅伝初制覇への秘策とは…“鬼門”の山上り5区にエース平林清澄投入はあるか?
鬼門の山上り5区を誰に任せるか?
それでも、就任16年目を迎える前田監督は「箱根はめちゃくちゃハードルが高い」と険しい顔ものぞかせる。懸念しているのは、山上りの5区。春から対策を練ってきたが、太鼓判を押すスペシャリストは見つかっていない。現時点での候補は3~4人。今夏、猛暑日が続いたこともあり、適性を見極めるトライアルも参考にはならなかったという。一方、ライバルに目を向けると、“山のキーマン”がいる。駒澤大は2大会前に区間4位と力を示した山川拓馬(3年)、青山学院大には前回大会で区間新の2位となった若林宏樹(4年)が控える。 「現時点の話をすれば、山の区間は駒澤大、青山学院大のほうが力を持っていると思います。ここまで(出雲、全日本)は全員の力でなんとかなりましたが、山で破壊力のある走りをされると、9人が束になってかかっても敵わないこともある。そこが箱根駅伝の深さ。だから、“山の神”という言葉もあるのでしょうね。山はタイム差が出ますから」 令和時代の優勝チームは例に漏れず、5区は最低でも区間4位以内にまとめているが、國學院にとっては鬼門。97回大会から山上りの区間順位を見ると、8位、9位、7位、17位だ。前回は上原琉翔(現3年)、前々回は伊地知賢造(現ヤクルト)と本来、往路の主要区間を走る攻めの駒を配置したが、想定以上に苦しんだ。それでも、また攻めるのか。それとも、耐えるのか。
エース平林を5区に投入も?
積極的な一手がないわけではない。2年連続で花の2区で起用してきたエースの平林清澄(4年)である。強靭な精神力に加え、起伏にも強くてスタミナもある。適性は十分。何より山上りに対して、本人が後ろ向きではない。以前、駅伝好きを自認する本人は楽しそうに話していた。 「小学生の頃に最初に憧れたのは、“山の神”と言われた東洋大の柏原竜二さん。中学生になっても、5区で青山学院大の神野大地さんが走るのを見て、かっこいいなと思いました。山は抜きつ抜かれつのドラマがある。憧れは持っていましたね。往路のフィニッシュテープを切れるのもいいなって」 区間配置に考えを巡らせる前田監督も選択肢の一つとしては、頭にあるようだ。フィニッシュ地点の伊勢神宮から閉会式の会場に向かう道すがら、平林の5区起用についてポツリとつぶやいた。 「戦略としてはあり。もしも(往路の)締めで使うなら5区」 仮に平林を5区に回しても、2区を担えるタレントはいる。次代を担うエース候補の上原は出雲路の5区で区間賞、伊勢路ではアンカーで青山学院大を捉えて優勝のフィニッシュテープを切った。競り合いに強く、起伏のあるコースも得意である。学年リーダーを務める責任感もあり、適性は十分だろう。
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