「涙は箱根に取っておく」三冠王手の國學院大・前田康弘監督、箱根駅伝初制覇への秘策とは…“鬼門”の山上り5区にエース平林清澄投入はあるか?
全日本大学駅伝で初制覇を果たし、学生三大駅伝の三冠に王手をかけた國學院大学。前田康弘監督が見据える箱根駅伝への自信のほどと、その秘策に迫る。<全2回の後編/前編から読む> 【写真】【現地写真】「これはキツい!」全日本駅伝、平林vs太田、エース対決のデッドヒートと逆転ゴールから、「一冠目」出雲駅伝での國學院大ほか、現地撮り下ろし写真を全部見る 全日本大学駅伝の熱気に包まれた伊勢神宮で初優勝の瞬間を迎えても、涙もろい熱血漢の涙腺は緩まなかった。出雲駅伝に続き、二冠を成し遂げた國學院大の前田康弘監督は、落ち着き払った表情ですぐに先を見据えていた。 「『日本一』は取ると言ってきましたので。涙は箱根駅伝に取っておかないとダメですよね」 出雲路では最終6区で駒澤大に競り勝ち、伊勢路でもアンカー区間で青山学院大に完勝。令和の時代をけん引してきた2強を崩しても、『三冠』の言葉を聞くと、首を大きく横に振った。 「三冠なんておこがましい。秒差を見ても、そこまで駒澤大、青山学院大との力の差はないです。(2022年度に)駒澤が三冠を達成したときは明らかに強かったですが、うちは一戦一戦全力で戦い、やっと勝てています」
すでに9番目、10番目のメンバーは準備している
無論、まったく自信がないわけではない。「うちは可能性を秘めているチーム」と含みを持たせる。当初から目標に掲げているのは、初となる箱根駅伝の総合優勝。前田監督の母校である駒澤大の5連覇を阻止した力は本物だろう。例年以上に選手層は分厚くなっており、11月3日の優勝会見に並んだ8人の走者と遜色のない候補が控えているという。 「すでに9番目、10番目は準備しています」 20kmを超える距離に照準を合わせ、“箱根1本”に懸けている選手たちもいる。全日本大学駅伝で当日変更となった3人のうち2人は箱根経験者。鎌田匠馬(3年)は前回の8区で区間6位、田中愛睦(2年)は7区で7位とともに復路で健闘している。 全日本大学駅伝でメンバー入りした他の補員の走力もあなどれない。後村光星(2年)は1年時に6区で区間10位と力走した山下りを得意するスピードランナー。そして、ルーキーの飯國新太は大学駅伝デビューこそ果たしていないものの、前田監督がこれまで見てきた國學院久我山高校の長距離ランナーで歴代最高と称するほどのポテンシャルを持っている。 「枚数はそろっています。復路でも勝負できる。正直、エースでは差が出ないのかなと。駒澤大の篠原倖太朗選手、青山学院大の太田蒼生選手、黒田朝日選手も強いので。むしろ、“つなぎ区間”はうちが一番強いと思っています。(出雲駅伝は4区、5区。全日本大学駅伝は5区、6区と)区間賞を並べることで、その強さは証明できているはず」
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