「エディアカラ紀」の地磁気は弱かった 生物が大型化した理由の可能性
約6億年前の「エディアカラ紀(エディアカラン)」は、目に見える大きさの多細胞生物が発見されている最も古い時代として注目されています。しかし、なぜエディアカラ紀に生物の身体が複雑化・大型化したのか、その理由はよく分かっていません。 今日の宇宙画像 ロチェスター大学のWentao Huang氏などの研究チームは、エディアカラ紀の「地磁気」の強さを調査しました。その結果、エディアカラ紀の約2600万年の間、地磁気の強さは現在の10分の1以下、最小で約30分の1というかなり低い水準だったことが判明しました。詳しくは後述しますが、この出来事は最終的に海水中の酸素濃度を増加させ、生物の進化を促した可能性があります。
■生物が複雑化した「エディアカラ紀」の謎
地球の歴史上、明確な生物化石が発見されている最古の時代は約6億年前の「エディアカラ紀」(※1)です。エディアカラ紀の地層からは目に見える大きさの生物化石が数cmから1mを超えるものまで数多く発見されており、それ以前の間接的な証拠しか残っていない時代とは明確に異なります。エディアカラ紀の生物は、現生の生物は無論のこと、次の時代であるカンブリア紀の生物とも似ていない独特な身体をしています。参考となる生物がいないため、動物なのか植物なのか、あるいは菌類なのか、極めて基本的な分類すら決定されていない生物も数多くあります。 ※1…より正確には約6億3500万年前から5億3880万±200万年前。 化石記録を調べる限りでは、エディアカラ紀以前の時代の生物が単細胞生物だったのに対し、エディアカラ紀にはより複雑かつ大型の多細胞生物へと進化したように見えます。しかし、何がきっかけで進化が促されたのかは判明しておらず、生命の進化における大きな謎の1つとなっています。 それでも最近になって、地球の固有の磁場である「地磁気」がエディアカラ紀には弱くなっていた可能性があるとする研究が発表されたことで、地磁気の強度と生命の進化に関連があるのではないかとする説が主張されるようになりました。しかし、エディアカラ紀やそれ以前の時代の地磁気については、測定そのものや測定値の解釈が難しく、研究が困難でした。 2024年4月には研究史上最古となる37億年前の地磁気の強さの測定結果が発表されましたが、ごく最近の発表であることが示すように、この種の研究は本質的に困難を抱えています。 また、地磁気を巡る仮説とは別に、エディアカラ紀には海水中の酸素が豊富だったのではないかとも主張されています。ただし、その証拠となるデータの解釈には複数の方法があり、逆に酸素が不足していたとする見方もできるため、この主張には大きな論争があります。