日銀・植田総裁発言からにじむ、石破政権との「微妙な距離感」
日銀は10月31日までに金融政策決定会合を開き、0.25%とする政策金利の据え置きを決めた。米大統領選の投開票日を控え、米国経済の先行きや、なお不安定な金融市場を見極めるためであり、現状維持は市場の予想通りだった。ただ10月の衆院選で自公連立政権が過半数割れとなったことを受け、国内政治の不安定さが増しており、日銀の政策のかじ取りは難しくなっている。植田和男総裁の発言からも石破茂政権との微妙な距離感がにじみ出る。 「財政政策は国会で決めることなのでコメントは控える。ただ中長期の財政については配慮頂くことが重要だ」。10月31日の記者会見で植田総裁は、政局の不安定さが日銀に与える影響を問われてこう答えた。石破氏は政権安定化のため国民民主党との連携を探っており、財政を拡張せざるを得ない可能性がある。金融市場では日銀の政策正常化が遅れるとの見方が浮上している。金融政策を巡って、政府と日銀の認識に微妙なずれが見え隠れする。 10月23日に開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、加藤勝信財務相は円相場が一時1ドル=153円台と約3カ月ぶりの円安・ドル高水準になっていることについて「緊張感をさらに高めて、注視する」と危機感を示した。一方で植田総裁は会見で、追加利上げについて「時間的な余裕はあると思っている」と慎重に判断する考えを説明した。 日本株の歴史的な暴落があった8月以降、植田総裁は追加利上げについて「時間的な余裕はある」と繰り返してきた。米国経済の悪化懸念が強まっていた時期であり、それを見極めたいとの考えだ。ただ当時は1ドル=140円台であり、現在とは為替水準が異なる。東短リサーチの加藤出社長は「1ドル=150円台は多くの中小企業の業績や家計を直撃する。来年の参院選を控えた政治家は目先の景気を優先する」と長期の物価安定を目指す日銀と時間軸が異なると解説する。