日銀・植田総裁発言からにじむ、石破政権との「微妙な距離感」
政権側も金融政策に一貫性欠く
一方で石破政権側も金融政策に対するスタンスに一貫性が見られない。 9月29日、東京・赤坂の衆院議員宿舎で、石破氏は金融庁の井藤英樹長官と財務省の三村淳財務官と面会した。 27日に自民党総裁に就いてから、霞が関の官僚と面会するのは初めて。議論したのは主にマーケット対策だった。石破氏側近の自民党参院議員は「(総裁選の結果を受けて)日経平均先物が急落したため、翌30日の株式市場を事前にイメージしておく必要があった」と説明する。 総裁に就任するまで、石破氏は緊縮財政派として財政健全化に前向きに取り組む姿勢を示し、インフレ対策である日本銀行の利上げも肯定してきた。案の定、30日は短期国債(2年物国債)の利回りが前週末比で約20%上昇。これで「追加の利上げが前倒しされるという見方が債券市場に広がった」(外資系証券アナリスト)。日経平均株価は前週末比で5%(1910円)下がった。 ところが、10月2日、石破氏は日銀の植田総裁との面会後に「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と語った。日銀が早期の利上げを決行するという観測の沈静化を図ったのだ。 狙い通りに3日は東京市場が円安・株高に振れた。しかし、それが急激だったためか、今度は「利上げには時間的な余裕があると説明している植田総裁と同じ理解だ」と、日銀にくぎを刺すことになった2日の発言を修正した。 「もともと石破氏は金融や市場の門外漢で関心は低いため、姿勢がぶれやすいのは仕方がない。為替政策を巡る日銀との擦り合わせは財務省に全権委任し、出てきたものを容認するという対応になるのではないか」。前出の石破氏側近議員は、こう指摘する。財務省幹部は「石破氏は安全保障や地方活性化といった一家言ある政策に絞って、自分のカラーをどう出すか腐心していくだろう」とも予測する。
鳴海 崇、阿曽村 雄太