睡眠を考える──「質の良い眠りには、なぜ朝のタンパク質が欠かせないのか?」
運動技能の向上を促す睡眠
──寝ることで身体はどのように変化するのでしょうか。 深い睡眠をとることで、成長ホルモンが分泌してケガが治る、疲れがとれるといったことはもちろんですが、脳をコンディショニングするという大事な役割もあります。人間の身体は、どれだけ筋力をつけても、動かす指示を出しているのは脳であって、まずは脳を休ませないといけません。それが出来るのが睡眠なので、睡眠をおろそかにするとどれだけトレーニングをしても思うように身体が動かない、ということはあります。 ──脳が休まらないと、試合でもよいパフォーマンスが発揮できない? その通りです。一晩7.5時間寝るとして、ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しますが、起きる直前の浅い睡眠が運動技能の向上を促す時間といわれています。2002年にカリフォルニア大学バークレー校の研究グループが、「楽器や運動などの技能の習得や向上には、目が覚める2時間前の最後の比較的浅い眠りが重要」という研究結果を発表しています。たとえばシュートやドリブル、トス、サーブなどの技術が向上したり、子どもが自転車に乗れるようになったり、字がきれいに書けるようになっていくのもこの時間次第といわれています。 なので、この起きる直前のノンレム睡眠がきちんととれていないと、どれだけ努力してもうまくならない。6時間以下の睡眠ですとこの時間が十分にとれていないことになるので、運動機能が向上しない。だから睡眠はリズムや時間が大事といわれているのです。いわゆる「質の良い睡眠」とは、このノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返され、朝すっきりと気持ちよく目覚められること。具体的には人それぞれ異なるため、単純に「何時間寝ればいい」というものではありません。 ──昔のプロ野球選手は、試合が終わると夜の街に繰り出し、寝ないで翌日の試合に臨んでいたという武勇伝を話していたイメージがあります。 昔の話というよりも、わりと最近までひどかったですね(笑)。お金を持っている1軍選手の生活は派手ですし、「いい車に乗りたい、いい時計をしたい、きれいな女性と遊びたい」など、後輩たちも先輩の姿を見て育ちますので。ただ、プロ野球選手たちの生活パターンも、コロナ禍でずいぶん変わりました。夜遊びをしたくても出来なくなってしまった。コロナ禍と大谷選手の発言などの影響もあって、スポーツ選手における睡眠を取り巻く環境もずいぶんと変わってきたと思います。