ロ朝新条約締結は北朝鮮の兵器工場化が目的だ、ウクライナ支援を拡大する西側に最終核戦争の恫喝
有事の際の相互軍事支援規定だけでなく、北朝鮮との「軍事・技術協力」についても、当面、ウクライナ情勢に絡んだ協力を優先するとの考えを強調したものだろう。 つまり、ロシアによる北朝鮮の核開発への技術支援など、国際社会が懸念する軍事技術支援の大幅拡大は当面、本腰を入れて行う考えがないことを示唆したものだ。 一方で、今回の条約締結で北朝鮮は、プーチン・ロシアを自国の安全保障の強力な後ろ盾にしたい思惑があるのは明らかだ。
この食い違いは「同盟」をめぐる両首脳の発言に端的に表れた。金正恩氏は今回の条約によりロ朝関係が「同盟に引き上げられた」と表明したが、本稿執筆段階ではプーチン氏は「同盟」という表現を使っていない。 ■ロ朝で食い違う「同盟」への認識 なぜ「同盟」をめぐる発言で両首脳間に温度差があるのか。その根本には、朝鮮半島情勢の現状に関する認識の差がある。 核開発を進める北朝鮮に対し、近い将来アメリカが何らかの軍事的強硬策を仕掛ける可能性はなく、現時点で相互防衛の義務を負う「同盟」関係の樹立を急ぐ必要はないとロシアはみているのだろう。
侵攻から2年以上が経過したウクライナ戦争に掛かり切りのプーチン政権にとって、今、北朝鮮との完全な同盟化を急ぐ余裕などないのだ。 それでは、プーチン氏が今回の新条約調印で具体的には何を目指しているのか。それはロシアに砲弾などの兵器を大量に供給する北朝鮮の「兵器工場化」だろう。 ロシアが北朝鮮の「兵器工場化」を急ぐ背景には、戦況の変化がある。2024年6月4日付の「アメリカとウクライナの足並みがそろわない理由」で、筆者は2024年2月以降、北部ハリコフ州や東部ドンバス地方でロシア軍は、いくら攻撃を繰り返しても、大きな占領地拡大に結び付けられないという手詰まり状態になってきたと書いた。
その後、ウクライナ軍はロシア軍から主導権を奪還できる可能性が出てきたと自信を持ち始めている。 このような戦況の中、まさにこの夏にF16の第1陣が欧州から到着する見込みだ。ウクライナ軍は、F16を切り札にした第2次反攻作戦の開始を密かに計画している。ウクライナ軍高官はその時期や規模については固く口を閉ざし、超機密事項となっている。 今回ウクライナ軍は、2023年夏に失敗した前回の反攻作戦とは異なり、ロシア領内への攻撃も想定しているとみられる。この動きを承知しているプーチン氏にとって、ウクライナ軍のロシア領への攻撃を含め、第2次反攻をどう跳ね返すか、という目の前の危機回避が喫緊の優先的課題なのだ。