「現代人の不安」の根底にある「つながりのなさ」 「私」ばかりで「私たち」という視点に欠ける社会
友だちの数、生産性の高いチームのメンバー数、縦割り化する会社の社員数……。これらの人数は、進化心理学者のロビン・ダンバーが発見した「ダンバー数」や「ダンバー・グラフ」に支配されている。古来人類は、「家族」や「部族(トライブ)」を形作って暮らしてきたからだ。 メンバー同士が絆を深め、信頼し合い、帰属意識をもって協力し合う、創造的で生産性の高い組織を築くためには、このような人間の本能や行動様式にかんする科学的な知識が不可欠である。日本語版が2024年10月に刊行された『「組織と人数」の絶対法則』について、霊長類学者の山極壽一氏に話を聞いた。4回にわたってお届けする(第1回はこちら、第2回はこちら)。 【写真で見る】5, 15, 50, 150・・・・・・ この数字に秘められた「すごい力」がわかる本
■小規模の企業ほど存続率が高かった ロンドン証券取引所において、100年以上存続しているのは、みんな社員300人未満という小規模の企業です。 グローバルな企業は、一歩間違うと、あっという間に崩れてしまいます。一方、小さな企業は、もちろん倒産もたくさんありますが、立ち上がることができます。 組織の規模、そして、そもそも「人間が働く」とはどういうことなのかを感じられる社会とはなにかということを教えてくれるのが、本書です。
日本は、中小企業が99%です。しかも100年以上続いている会社が世界でいちばん多い国でもあります。そのほとんどは小さな規模ですが、実はそのことが、これから大きな力を発揮していくかもしれません。 そもそも、産業革命が起こる以前、働くというのは、「みんなで生きる力」のことでした。 イギリスで産業革命が起きたのは、農地を投資対象にすることができるようになったからです。それで農民を農村から追い出したのです。
それまで、みんなで農業をしながら暮らしていた人々は、土地を奪われて都市へと流れていき、個人はバラバラになりました。そして、繊維工などに就かなければならなくなったことが、産業革命の出発になったわけです。 つまり、もともとは、個人がバラバラにされるところから始まっているのです。 だからこそ、国民国家を作らなければならなかった。それまでは、土地によって組織の作り方は違っていたし、人々の交流も、文化によって違っていました。それを、言語を統一し、教育制度を統一することで、すべての人々が国家を向くよう仕向けたわけです。