定年後のほとんどの人が悩んでいる最大の問題…「睡眠」と向き合うための「とっておきの秘訣」
元伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。仕事に生涯を捧げてきた名経営者も85歳を迎え、人生の佳境に差し掛かった。『老いた今だから』では、歳を重ねた今だからこそ見えてきた日々の楽しみ方が書かれている。 【画像】ほとんどの人が老後を大失敗する「根本的な理由」 ※本記事は丹羽宇一郎『老いた今だから』から抜粋・編集したものです。
毎日のルーティーン
通常、私は朝食後から午前一一時半頃まで新聞や雑誌を読んだり、インターネットでいろいろなニュースを見たりします。仕事をリタイアしたあとも前職に関係のあるニュースに目がいく、という人は多いでしょう。私もそうで、関心があるのは日本や世界の政治経済。あとは、大リーグの大谷翔平選手が勝った、負けたというニュースがスポーツでは唯一で、日本の政界のもの以上に見ています。 ニュースを見ながら、大事だと思うことはメモしておきます。これは、私が若い頃にくらべて物忘れをしやすくなったからではありません。人間とは、そもそも生まれながらに「忘れっぽい生き物」だということを、過去の経験で痛感しているからです。 日々、メディアを通して入ってくる情報のうち、翌日になっても頭に残っているのは、何割かにすぎない。一週間もたてば、ほとんど残っていない。それくらい、私たちの頭は忘れやすい構造になっています。 ですから皆さんも、「ちょっと気になるな」と思うニュースがあれば、読むだけでなく、メモしておくとよいでしょう。 かつては長時間座っていても腰痛など経験したこともなかったのですが、この年になると、同じ姿勢で座っていると筋肉が硬直して腰が痛くなってくる。そうなると、「ちょっと休むか」ということになり、そのままソファで寝てしまうこともあります。こうした時間のほかに、私は就寝前に三〇分ほど読書をすることが多いのです。 午後六時半から七時頃に夕飯をとり、ひと休みします。
睡眠時間は気にしなくていい
でも、そのあとの入浴が大変です。以前は、身体を洗うなど無意識でやっていましたが、今はちょっと身体を動かすだけであちこちが痛い。身体を洗うのは関節をものすごく動かす動作なのだと、この歳になって気づきました。 洗髪してシャワーで流すときも、へたに身体を動かすと痛くなるうえ、お湯が耳の中に入ってしまい、始末が悪い。日常生活のなかで、「やはり若い頃とは身体が違ってくるんだなぁ」と実感することが本当に多くなりました。 ベッドに入るのは、午後一〇時から一一時頃です。睡眠は、できるだけ七時間はとるようにしていますが、夜中にトイレに起きたりするので、朝までずっと眠り続けることはできません。 ちなみに、二〇二一年にOECD(経済協力開発機構)が三三ヵ国を対象に行った調査では日本人の一日の平均睡眠時間は七時間二二分で、三三ヵ国中最も短く、全体の平均である八時間二八分より一時間以上短かったと報告されています。 ただ、歳をとってからの睡眠は、時間が長ければいいというわけでもないようです。 厚生労働省が出している「良い目覚めは良い眠りから 知っているようで知らない睡眠のこと」というパンフレットには、「リタイア世代では8時間以上の睡眠を必要とする人は多くありません」と書かれているんです。 さらに、このパンフレットによれば、睡眠は、目覚めたときに「休養感」(しっかり休めたなという感覚)があることが重要だということです。 しかし、歳をとると夜中にトイレに行きたくなって、睡眠が中断されることが多くなる。私もそうですし、読者のなかにもそういう方が少なくないと思います。 人によっては、トイレに行くための動作に身体の痛みが伴う人もいるでしょう。私の場合、ベッドから降りるとき、身体の右側から降りるので、右腰が痛くなることがあります。どうしても降りる側に力が入ってしまうからです。 個人差もあるでしょうが、目覚めたときの「しっかり休めたな」という感覚は、加齢とともに得にくくなるのではないか、というのが私の実感です。 それでも、睡眠の質や時間について、私はあまり深刻にとらえていません。休養感が足りないときは昼寝をすればいい、五時間で目が覚めたときはベッドの上で身体を休めているだけでいいんだと思い、そうしています。 さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。
丹羽 宇一郎