災害関連死、転居回数が影響 福島医大研究チーム分析
福島医大放射線健康管理学講座の伊東尚美助手らの研究チームは、東京電力福島第1原発事故後に南相馬市で災害関連死と認定された520人の転居回数を分析した結果、全体の33.8%が4回以上の転居を経験していたとする論文をまとめた。複数回の転居は、心身の機能低下に加え、持病の管理が困難になったり、医療・介護サービスが中断したりするなど複合的な健康被害を招くとして、支援体制の構築を求めている。 論文が23日までに国際誌に掲載された。研究チームによると、同市の災害関連死認定者520人(2022年2月時点)の転居回数の平均は3.03回で、平均を上回る4回以上の転居経験者が3割を超えた。このうち転居を8回以上経験した80歳以上の3事例を詳細に分析した結果、災害から死亡までの期間が600日以上(平均期間は230.6日)と長期化がみられた。避難の長期化に伴って持病の管理困難や定期的な受診の中断による病状発見の遅れ、継続治療の中断などが生じ、最終的に心不全や呼吸不全などで死亡に至ったことが確認された。かかりつけ医との関係が絶たれたことも、健康被害につながっていた。 520人の平均年齢は82.69歳。長期にわたる複数回の転居によって困難になるこうしたケースは、特に高齢者や持病のある人に大きく影響する。伊東氏は「転居回数を最小限に抑えつつ、必要な医療・介護サービスを途切れさせない支援体制の構築が求められる」としている。
福島民友新聞