「拝め拝め拝め拝め」宗教にのめりこむ毒母が放つ絶望感…笑顔消えた中学生の娘がヤンキーとつるみ再生した訳
■笑わない思春期 しかし、不登校を経験した後の如月さんの顔からはすっかり笑顔が消えた。中学生になるとヤンキーグループと交わったり出会い系サイトを漁ったりするように。 「ネットで出会った人と付き合ったり、友達になったりして夜遊びしまくりました。実は小学校、中学校の時はとくに自殺願望を強く抱いていて、本当に実行に移そうと考えたこともありました。自宅を自分の居場所だと感じられなかったんです」 夜遊びに出かけるときは、最初こそ自分の部屋からこっそりと家を抜け出ていたが、親も馬鹿ではない。母親には何度か見つかってはこっぴどく怒られたり止められたりしたが、何度も繰り返すうちになぜか母親は根負けしたのか、約1年後には放置状態だったという。 乱れた生活の如月さんの行く末が心配されたが、高校生になると、環境が一変。通学に電車で1時間ほどかかる都会の高校に入学したことが功を奏して、自ら更生した。 「学力に合った高校に入ったので、授業についていけたことや、田舎にはないショッピングモールやアミューズメントパークなどの施設で遊べるという喜びで、ただ楽しかったです。学校までの距離が遠いため、母が牛耳る家で過ごす時間が自動的に減ったのも良かったのではないかと思っています」 しかし、如月さんは笑顔を見せないまま。仲の良い友達はできたが、「なんで笑わないの」「空気が読めないよね」「常識がないよね」などと言われると、その度に「なぜ笑えないんだろう?」と自分でもわからず落ち込み、友達との距離感に悩んだ。 ■20歳近くも年上の彼 高2の夏、如月さんが友達たちと海に遊びに行ったところ、男性グループに声をかけられる。それをきっかけに何度か一緒に遊ぶようになると、友達たちからの後押しもあり、そのうちの1人と交際が始まった。20歳近くも年上の建設現場の仕事をする男性だった。 交際をきっかけに彼氏の家に入り浸るようになると、相変わらず宗教にのめりこむ母親は「別れなさい」と言ってきたが、如月さんはそれを無視した。 なぜなら社会人の彼氏ができたことは悪いことではなかったからだ。彼氏や彼氏の友人たちと関わるようになって、人との距離感を学び、自分の居場所ができたようで安心し、笑顔を取り戻すことができた。 高校を卒業した如月さんは、県外の福祉系の会社に就職。家を出た後は実家に寄り付かないばかりか、連絡もしなかった。彼氏とは遠距離になってしまったため、会う頻度が減り、最終的には彼氏の浮気が発覚し、自らの決断で別れた。 ところが、この件以降の如月さんの人生はまさに茨の道というべきものだったのだ。(以下、後編へ続く) ---------- 旦木 瑞穂(たんぎ・みずほ) ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー 愛知県出身。印刷会社や広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターなどを務め、2015年に独立。グルメ・イベント記事や、葬儀・お墓・介護など終活に関する連載の執筆のほか、パンフレットやガイドブックなどの企画編集、グラフィックデザイン、イラスト制作などを行う。主な執筆媒体は、東洋経済オンライン「子育てと介護 ダブルケアの現実」、毎日新聞出版『サンデー毎日「完璧な終活」』、産経新聞出版『終活読本ソナエ』、日経BP 日経ARIA「今から始める『親』のこと」、朝日新聞出版『AERA.』、鎌倉新書『月刊「仏事」』、高齢者住宅新聞社『エルダリープレス』、インプレス「シニアガイド」など。2023年12月に『毒母は連鎖する~子どもを「所有物扱い」する母親たち~』(光文社新書)刊行。 ----------
ノンフィクションライター・グラフィックデザイナー 旦木 瑞穂