売上を指標にせずに「業績を上げ続けている企業」の共通点
顧客が顧客を呼ぶ! 理想的な好循環
では、顧客数を増やすと、なぜ、明日の売上の心配をしなくてよくなるのでしょうか。 ある商品や店に愛着や信頼や共感を持った顧客は、その商品や店を繰り返し利用するようになります。そこに、いわゆる「単純接触効果」が働きます。これは、ある対象に繰り返し接触することで、好感度や親近感が増すとされるものです。 つまり、接触回数が増えるほどいっそうロイヤリティが高まり、利用が増える。するとまた好感度や親近感が増し、利用が増えるという好循環が生まれるということです。 さらに、そこに「貢献実感」が加わります。あなたにも経験があると思いますが、自分の好きな商品や店は、人に勧めたくなります。貢献実感とは、ある商品や店に愛着や信頼、共感を抱くと、それに対して貢献したくなることを指すのですが、それゆえに、積極的に人に勧めます。すると、顧客が顧客を呼ぶという好循環が生まれるのです。 ある化粧品販売店では、このような口コミ効果もあり、顧客数が20年で倍増、販売単価も1万円以上増えました。廃業を決めた同業他社すら「今後はあそこで買うといいですよ」と勧めてくれるというのですから、驚くような話です。 これはあくまで一例ですが、「顧客数を増やすことだけを考えれば、売上も利益も上がる」というのは、こういうメカニズムが働くゆえのことなのです。
プライベートを明かしたら顧客が増えた⁉
顧客数が増える要素は幾つかありますが、重要なものの一つに「共鳴価値」があります。 あるジビエ料理店では、それぞれの料理のストーリーを語ることを重視しています。単なる「猪肉」「熊肉」ではなく、「みかんを食べてほんのりオレンジ色になった猪肉」「伝説の猟師が撃った熊肉」など。この店では、こうしたストーリーが顧客の共鳴を呼び、顧客数がどんどん増えています。また、自分たちの価値に共鳴してくれた取引先は、価格を気にしなくなるため、客単価は2倍以上になりました。 また、「自己開示」も重要なものの一つです。 ある紙問屋では、初めての取引先に、自己紹介レターやミッションレターを送っています。また、その後も3カ月に1回、自分たちの近況を報告するニューズレターを送る、なども行なっています。 そこに書かれているのは、自分たちが日々考えていることや、プライベートな話題ばかり。商品説明はほとんどありません。でも、その内容が愛着や信頼、共感を生み、顧客がどんどん増えています。 特筆すべきは、同社の業界では他社も同じ商品を扱えることから、以前は頻繁にあった「値引き」を求められることがほとんどなくなったこと。ドライと言われるBtoBの世界でも、こういうことが現実に起こっているのです。 これでおわかりいただけたでしょうか。顧客を増やせば購買頻度も購買単価も上がる。ゆえに、売上が上がる。値引きの必要もなくなるし、口コミが口コミを生み広告宣伝費も減るので、利益も上がる。 もちろん、顧客とのコミュニケーションなどにある程度のコストがかかるとしても、十二分にペイできるのです。