最下位オリックスに引き分けたキューバは本当に侍Jの脅威ではないのか
WBCの開幕戦で対戦するキューバが3日、京セラドームでオリックスと強化試合を行い、3-3の引き分けに終わった。着実に得点を重ねたオリックスは、3-0で迎えた8回に5番手の吉田一将が4安打を集中されて追いつかれたが、それもエラー絡み。キューバの4番デスパイネ(ソフトバンク)はノーヒットで、かつて“赤い稲妻”と呼ばれたほどの打線の迫力は見られなかった。WBC開幕戦(3月7日)となるキューバ戦は、1次リーグの最初にして、最大の山場だが、昨年のパ・リーグの最下位チーム、オリックスと引き分けたキューバは本当に脅威なのだろうか。 スタートは先発左腕、松葉貴大の完全試合ペースで進んだ。ほとんどの打者がタイミングが合わずにどん詰まり、3回一死からキャッチャーのモレホンが松葉のグラブを弾く内野安打出塁するまで、まるで気配がなかった。4回も、元侍戦士の西に1イニングをピシャリと抑えられ、5回に、この試合、ただ一人の“当たり屋”だったモレホンに、またセンター前を許したが、6回に先頭のサントスが、足でヒットを稼ぐまで、それ以外にヒットはなかった。キューバは、多くの打者がベースから少し離れた位置から踏み込んでくるスタイルなので、どうしても突っ込んで打球が詰まるのである。 「前半は試合勘がなかったのだろう。前半のようなら(侍ジャパンも)大丈夫だと思うが、3、4打席で、試合勘が出てきた後半は、甘いボールを許してくれなかった」と、オリックスの福良監督が、振り返ったように8回に集中打を打たれた。オリックスのセットアッパーの吉田から、モレホンが3本目のヒットで出塁すると、サントス、アヤラが連打で1点を返す。元巨人のセペダも、左打席からうまく三遊間へ流し打って2点目。前半の狂いを修正したかと、言えば、したとも取れるバッティングだった。 ただ、二死となってから、サーベドラの三塁横を襲った打球をうまくさばいたように見えた鈴木が一塁へとんでもないスローイング。その間、同点走者がホームを駆け抜けた。守りのミスがなければなかった1点。実質、オリックスの勝利ゲームだったのである。 トップのサントスとスイッチのセペダ以外は、ズラっと右打者。キューバの監督が、「キーになる選手」として名前を挙げたメッツのセスペデセスの弟、19歳のY・セスペデスにしても、確かにバットスイングは速かったが、上下に揺さぶれると、からっきしの弱点をさらけだしていた。 サントス、アヤラの1、2番と、9番のセスペデスには、機動力を使えるスピードがあるが、6回には、その足のあるサントスが出塁しても手堅くバントで送らせた。基本、セオリー野球を貫きそうな傾向も垣間見えた。何をしてくるかわからないところから勢いづくのが、キューバの怖さだったが、これなら怖くない? アブレイユ、セスペデス、グリエルら名だたる主力が、次から次へと亡命、メジャーリーグでプレーをしはじめてから起きた“空洞現象”から、今なお抜け出せていない印象である。 侍ジャパンは、キューバ打線を抑えることができるか?と聞かれて、福良監督は、「緩急をつけることが大事」と答えた。開幕戦の先発予定は、シンカーを武器とする石川歩(ロッテ)。剛球派の則本(楽天)よりも、“緩急”というキーワードに、石川が、はまるのかもしれない。