不調・香川のインサイドハーフは成功するか
長く代表で一緒にプレーしてきた遠藤や長谷部と中盤を組むことで、香川本来の動きを取り戻すことができると前出の水沼氏は指摘する。 「11月のオーストラリア代表戦のように、4‐3‐3が機能していないと選手たちが感じ、遠藤が一列下がった状態になれば、香川は自然とトップ下のようなポジションになる。遠藤や長谷部たちとコミュニケーションを取りながら、トップ下の位置から1トップの岡崎を追い抜き、積極的にペナルティーエリアに入っていってもいい。左のウイングに乾が入れば、セレッソ大阪時代に培ったコンビネーションが生きる。アギーレジャパンが発足した頃は新しい選手も多く、そういうことをピッチ上で話し合えるような状況ではなかった。いまは経験が豊富な選手が多いので、香川も思うことをどんどん要求すればいい。そうすれば、自然と香川が輝く条件も整ってくると思う」 年末からの国内キャンプを含めて、香川を含めた選手たちはすでに2週間もの時間を共有している。アギーレジャパンが発足してからは初めてのことで、キャプテンの長谷部も「これだけ長く一緒にいることもあまりないので、チーム作りという部分でも貴重な時間としていきたい」と話していた。 水沼氏はオーストラリア入り後のアギーレジャパンに関する報道で、香川が無邪気な笑顔を浮かべている写真が掲載されていたことが「大きな意味をもっている」と言う。 「本田が『日本人同士で言葉が通じるので、いろいろなことを修正するにはある意味で簡単かもしれない』と言っていた。まさにその通りで、大好きなサッカーを毎日やりながら、ピッチの内外でチームメイトたちとたくさん言葉を交わしていくことでストレスを発散すればいい。南半球のオーストラリアはいまが真夏。気温が高ければ開放的になって、間違いなくテンションも上がる。セレッソからドルトムント、そしてマンチェスター・ユナイテッドへ移籍するまでのスピードがものすごかったことを考えれば、いまはただ立ち止まっているのではなく、再び高くジャンプするためにかがんでいると思えばいい。サッカー人生に無駄な時間はない。すべてが先へとつながっていると考えれば、今回のアジアカップは非常に有意義となるかもしれない。その意味でも決勝まで勝ち進み、できるだけ長く一緒の時間をすごしてほしい」 香川自身も、新たな年へ向けてこんな抱負を語っている。 「2014年をポジティブに考えると、いい経験ができた。この経験を生かしてこそ(2014年が)生きる。メンタル面を成長させる土台としてとらえたい」 豪州の地を負のスパイラルを反転させるきっかけの地とするために。己を信じて、頼れるチームメイトたちに支えられながら、香川は自身にとって2度目となるアジアカップに臨む。 (文責・藤江直人/スポーツライター)