自民党総裁選での経済政策論争①:地域経済活性化・東京一極集中是正
河野氏は高等教育機関の地方移転と少子化対策費の強化を提唱
河野氏は、少子化対策や東京一極集中の是正の対策として、高等教育機関の地方移転を掲げる。「首都圏あるいは近畿圏に18歳で若者が集まってくるという傾向がある」と指摘し、「東大が東京になくてもいいのではないかと正直思っている」と語っている。若者が地方に残ることが、地域経済の活性化や出生率の向上に貢献する、との考えだろう。ただし、政府が高等教育機関の地方移転を促すための補助金や税優遇を相当規模で行わないと、その実現は難しいのではないか。 河野氏は、東京都が豊富な財源を背景に充実した子育て支援策を講じることで、近隣県との間に政策の格差が生じていることも問題視している。格差解消のために「教育費の財源を一度国が吸い上げ、地方へ渡すべきだ」と、税の再配分も提唱する。
さらなる議論の活性化に期待
地域経済の活性化のために、地方への企業誘致を進めることを提唱するのが小林氏だ。小林氏は、「東京一極集中は健全ではない。是正すべきだ」と主張し、そのための対策として、全国に産業クラスター(集積地)を創設して地域の活性化を目指す考えを示している。「地方に産業クラスターをつくって、地方の雇用機会を増やして所得を上げていきたい。地方から経済を活性化していく新日本創造計画を打ち出していく」と語る。 高市氏、小泉氏といった他の候補者からは、地域経済活性化、東京一極集中是正について、積極的な意見は目立って聞かれていない。日本経済の成長戦略として非常に重要なテーマであることから、残された選挙期間の中で、石破氏、河野氏らが主導する形で、一層の議論の活性化が図られることを期待したい。 (参考資料) 「石破茂氏「地方」重視と安定感 原点回帰でも持論は刷新-「ポスト岸田」秋の陣」、2024年9月12日、日本経済新聞電子版 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英