外国人特別料金編(1)民間施設の「二重価格」に正当性はあるか オーバーツーリズム解消の切り札も…差別につながりかねないの指摘
【列島エイリアンズ】 政府観光局によると、昨年1月から11月までの訪日外国人旅行者は累計で約3337万人となり、過去最多だったパンデミック前の2019年の年間累計をすでに上回った。 【ランキング】訪日外国人の都道府県別訪問率、トップとワーストは? その一方で盛り上がっているのが、インバウンド関連業界で導入が検討されている訪日外国人向け二重価格に関する議論だ。 訪日外国人に対し、通常価格よりも高い「外国人価格」を請求することは、社会問題となっているオーバーツーリズムを抑制する効果があるとする声があるものの、外国人差別につながりかねないという指摘もある。 海外では、遺跡や美術館のほか、公共施設の入場料で、二重価格が設定されている国や地域は少なくない。インドのアジャンタ遺跡、トルコのトプカプ宮殿、タイのエメラルド寺院など筆者も旅行者として、外国人価格を課せられた記憶は事欠かない。もちろんいい気はしなかったのだが、かといって差別されていると感じたことはない。 それらの施設は当地の国民の共有財産であり、整備やメンテナンスには税金が投入されている。しかし、ヨソからきた外国人は、施設の所有者の一部でもなければ税金も払っていない。だから国民よりも高い入場料を支払うということは理にかなっているからだ。 日本では、世界遺産の姫路城(兵庫県姫路市)が、2026年春以降、入城料を二重価格とし、「市民以外」に「市民」の2~3倍の料金を課す予定だという。 当初、姫路市では訪日外国人を対象とした外国人価格を設定する意向を示していた。しかし、「外国人差別」などの批判が出たこともあり、市民か否かで分ける方針に固まったようだ。 姫路城の維持管理のコストは姫路市の税金で賄われているため、市民が安く入城できるのは納得がいく。しかし、姫路城自体は国有であり、国民共有の財産であることを考えると、国民(及び国内居住者)か否かで分けていたとしても、外国人差別という批判には当たらなかったのではないだろうか。 民間のホテルや飲食店でも、外国人価格を設定する動きが広がっている。これに関しては、国民の共有財産ではなく、基本的には税金も投入されていない施設であるため、二重価格の正当性を問われかねない。