東京23区私大抑制策に足立区反発 力を入れてきた大学誘致どうなるのか
9月29日、文部科学省は一部の例外を除いて、東京23区内の私立大学・短期大学の定員増や大学新増設を認めない方針を告示しました。 この告示が出された背景には、地方創生を掲げていた安倍政権と深い関係があります。日本全体の人口が減少する中、特に地方の過疎化と少子高齢化は顕著です。その対策として、地方は若年層の取り込みに躍起になっているのです。 今般、地方都市の大学では定員割れが続いていますが、その一方で地元を離れて東京の大学に進学しようとする若者は少なくありません。実際、少子化で18歳人口は減少傾向にありますが、それでも23区内で学んでいる18歳以上の学生数は約53万人にものぼると推計されています。 文科省が出している統計「平成27年度学校基本調査」によると、東京都に在住する18歳以上の学生は約72万2000人。東京都だけでも学生の数が圧倒的に多いのに、23区内には約7割も集中していることがわかります。 23区における18歳以上の学生数は今後も増加する傾向を示しており、政府と文科省は18歳人口が地方から流出してしまうことに歯止めをかけようとしているのです。 そうした政府・文科省の方針に対して、東京23区は真っ向から反対しています。特に、足立区は政府・文科省の方針に反発を強めています。長らく、足立区は大学を誘致する政策に力を入れてきたからです。
足立区に大学がなかった理由
足立区が長年取り組んできた大学誘致活動が実り、足立区内に悲願である大学のキャンパスが開設されたのは2006(平成18)年でした。美術・音楽分野では国内最高峰の大学として知られる東京藝術大学が、千住キャンパスを開設したのです。 それまでにも足立区内には放送大学の学習センターが開設されていましたが、これは足立区の生涯学習センター内に設置されているサテライトキャンパスです。大学独自のキャンパスではないため、足立区内に大学が立地しているとは言い難い状況でした。 「足立区に大学がなかった理由は、高度経済成長期に制定された工場等制限法です」と話すのは、足立区政策経営部経営戦略推進担当課の担当者です。 工場等制限法は都市部の過密を解消することや工場を都市圏から移転させることで地方の発展を促す目的がありました。 対象となったエリアは、首都圏や近畿圏などでした。工場等制限法は名称に“工場”とありますが、大学も対象です。そのため、大学と高等専門学校は1500平方メートル以上、専修学校と各種学校は800平方メートル以上の教室を設置することができなかったのです。