金ロー放送『ゴジラ-1.0』何がすごかったのか…!
『ALWAYS 三丁目の夕日』では建設中の東京タワーなど昭和の景観、『永遠の0』の空母赤城や『アルキメデスの大戦』の戦艦大和の沈没シーンなど、これまで見たことのない見せ場を次々に生み出してきた山崎監督。70年にわたって陸、海、空、地球以外の惑星などさまざまなロケーションで死闘を演じてきたゴジラだが、本作ではゴジラが大海原で軍艦との一騎打ちをするかつてない見せ場が描かれた。もともと山崎監督は本作の監督に就任する以前、『アルキメデスの大戦』の準備中に大和とゴジラが一緒にいたら面白いと思い立ち『ゴジラ-1.0』でそれを実践。ゴジラに襲われた重巡洋艦・高雄が、艦橋を破壊されながらゴジラを砲撃するシーンを生み出した。のしかかるゴジラに向け砲塔を旋回させ、超至近距離から巨体に砲弾を叩き込む、燃えるスペクタクルに仕上げている。
第1作をベストにあげる山崎監督は、いくつもオマージュを捧げたシーンを入れている。銀座襲撃シーンで、東京湾から上陸し銀座方面に移動、日劇へと向かう動線は第1作を踏襲。周囲を破壊しながら移動する足もとを強調した画角、口で列車をつかみあげる仕草も同じだ。なお列車をくわえるカットのゴジラの動きは、第1作で着ぐるみと共に使われたギニョール(手を入れて操る上半身のみのパペット)を意識してアニメートするというこだわりだ。ゴジラの目の前で実況していたアナウンサーやカメラマンが命を落としたり、ゴジラが初めて姿を現すのが伊豆諸島の架空の島・大戸島だったり、対ゴジラ兵器のデザインがオキシジェン・デストロイヤーを思わせるなどあげていけばきりがない。そもそもシリーズの多くがゴジラに挑む主人公のミッションを中心に展開する中、家族にまつわる私生活に重きを置いているのも第1作に通じている。第1作以外にも、クライマックスの流れが『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』(2001)を思わせたり、戦闘機・震電で飛び立った敷島が農村風景の中を移動するゴジラを発見するシーンの画作りは昭和シリーズ定番の光景にリンク。シリーズへのリスペクトにあふれた作品なのだ。 物語の舞台は戦後間もない復興期。国家の機能不全や民間・個の活力が日本を救う展開、災害で負った心の傷との闘いなど、現代にも通じるテーマを持った『ゴジラ-1.0』。この機会にあらためて本作の魅力を探ってみるのもよいだろう。