水責め、睡眠妨害…テロ組織幹部への拷問で問われた米国の「正義」 愛用のG-SHOCKを外して入った機密だらけの軍事法廷には独特のルールが【グアンタナモ報告・後編】
▽遺族の思い 2012年に被告らの罪状認否が実施されてから10年余り。機密の壁などで弁護団への証拠開示が進まないことに加え、裁判官が交代するたびに方針が変わり、裁判は長期化してきた。4人目の裁判官であるマコール氏は来年4月に退任する意向を表明している。 わずかな光明が見えたこともあった。米メディアによると、検察側は昨年3月に被告らが罪を認める代わりに死刑を求刑しない司法取引を提案。弁護団は被告らを独房に入れず、必要な医療サービスを提供するなどの条件を出した。 しかし今年9月、バイデン大統領がそうした条件の受け入れを拒否したと報じられた。正式な裁判での死刑判決を求める遺族への配慮と、「テロリストと取引した」との批判を招く政治的決断を避けたいとの思惑があったのだろう。いずれにせよ、長いトンネルを抜けることはできなかった。 弁護団によると、遺族の思いはさまざまで、公判前手続きを熱心に追い続ける人もいれば、ほとんど興味を抱いていない人もいる。
テリー・ロックフェラーさんは前者だ。世界貿易センタービルにいた妹のローラさんを失った。これまでグアンタナモ基地に10回以上足を運んだほか、自宅に近い米東部ボストン近郊の軍施設で法廷の中継映像を見守ることも少なくない。 「誰がなぜ、どのようにテロを起こしたのか」との疑問への答えを待ち続けている。テロの責任追及を求めるとともに「米政府は大きな間違いを犯した」として、被告の拷問や長期勾留、軍事法廷の設置を批判。「いつか政府の権限のある人物がこの20年間の過ちを認めなければならない」と訴えた。