水責め、睡眠妨害…テロ組織幹部への拷問で問われた米国の「正義」 愛用のG-SHOCKを外して入った機密だらけの軍事法廷には独特のルールが【グアンタナモ報告・後編】
民主主義や人権の擁護を掲げる米国はかつて中央情報局(CIA)による拷問を容認していた。2001年の米中枢同時テロ後に拘束した国際テロ組織アルカイダ幹部らから情報を聞き出すため、水責めや睡眠妨害といった手法を駆使した。米国の「正義」が問われ、今も同時テロで訴追された主犯格ら被告5人を裁く特別軍事法廷に影を落とす。弁護団は拷問後の自白調書の信用性を争うが、対テロ作戦に関わる機密だらけで公判前手続きは遅々として進まず、正式な裁判の見通しは立っていない。(共同通信ニューヨーク支局=稲葉俊之) キューバに広大な米軍基地、同盟関係でもない国になぜ? テロの被告らを長期勾留、「汚点」と批判される現場は今【グアンタナモ報告・前編】 ▽40秒ルール キューバにあるグアンタナモ米海軍基地の空港跡地に建てられた平屋の軍事法廷では、厳戒態勢が敷かれていた。有刺鉄線を張り巡らせた2層の金網に囲まれ、一部は黒い幕で覆われ「撮影不可」と大書された看板が設置されている。
電子機器は持ち込めず、法廷の建屋に入るまで2回、金属探知機で身体検査する徹底ぶりだ。普段、愛用しているカシオ計算機の腕時計「G―SHOCK(ジーショック)」も、長年取材している米紙記者から「スマートウオッチと疑われるから外したほうがいい」と言われた。 遺族や記者のための傍聴席は法廷の隣室と言ったほうが適当かもしれない。3重のガラスで仕切られ、法廷でのやりとりを見られるものの、ほとんど何も聞こえない。法廷の音声は40秒遅れでスピーカーを通じて流れ、傍聴席前の天井近くに設置されたモニターも目の前の光景とはタイムラグのある映像が映る。 「裁判官席の隣に赤色灯があるだろう」。公判前手続きを追うオンラインメディアの記者が教えてくれた。検察側が関係者の発言に機密情報があると判断した際には赤色灯が点滅し、傍聴席の音声とモニターの映像が遮断されるという。20年以上たったのに機密が含まれる話が多いのかと疑問に感じた。