【漫画家に聞く】人類が世界に10人だけの絶滅危惧種だったら……? 種を超えた愛を描く創作漫画に感動
もし人間が絶滅危惧種に指定されたら――。世界に10人だけの人類が別の種族に育てられる世界を描いた漫画が『リストルージュ』。Xでの人気をきっかけに連載へと発展した作品である。 種を超えた愛に感動……漫画『人間が絶滅危惧種だった話』 さらに改めて『人間が絶滅危惧種だった話』としてXに投稿された第0話も、約8.6万のいいねを集める人気となった。作者・灯晴ほくさん(@kikaizikakeno)は本作にどのような気持ちで向き合っているのだろう。(小池直也) ――8.6万のいいねが付いていますが、反響などはいかがですか。 灯晴ほく(以下、灯晴):再掲にも関わらず、フォロワーさんが約5000人増えるほどの反響がありました。本作の後に1話の試し読みも載せ、またコミックス発売から2日後の「コミティア」の宣伝をしようと思ったらXのアプリが固まってしまって。驚きましたね。 初めて載せた時は何も意識しませんでしたが、今回の再掲ではコミックス発売の宣伝ということもあり、特に気を付けたのは投稿の時間帯。あとはお祈りしてました(笑)。 ――本作の着想や制作のきっかけについて教えてください。 灯晴:実はこれを描いた際は深く考えていませんでした……。最初に考えたのは3つの短編ネームでした。当時は精神的に追い込まれていて、何を描いたら面白いのか全然わからなかったんですよ。 だから何も考えず、ただ描いてみたんです。ただ友達から言われて気付いたのですが、猫カフェで少し働いてたことがあって、その影響が少しあるかもしれません。 ――1度目の投稿と再掲では違う部分もありますが、具体的にどこを描き直しましたか。 灯晴:ほとんど変わっていませんが、連載にあたって編集さんからアドバイスをもらい世界観の深掘りをしました。それに伴い、連載版の方にはどうしてキメラ族が現れたのかの部分を足しています。またミラとカレンの周りの従者を色々な種族ではなく、鳥類っぽいキメラ族に変えたのは、国によっていろんな種族の子たちがいることを表したかったから。 ――冒頭の平和な質感から、最後の繁殖を止める場面までの物語構築が巧みだと感じました。話の流れはどう考えているのでしょう? 灯晴:読み切り作品を描く際は、必ず見開きを作るようにしています。あとは一番盛り上がる部分を最後にする。それ以外はあまり考えていません。いつも話を作りながら、頭の中に浮かんだ映像をネームに起こしている感じなんですよ。「映画にしたらどうだろう?」とも考えたり。 ――作画やキャラデザインについてはいかがでしょう? 灯晴:ミュージカルや舞台やショー、パレードが大好きで……。そこからデザイン的なインスピレーションを得ていますね。意識するのは「自分にしか描けないもの」。色々なものを参考にしつつ、独自の物語を考えられたら。 ――「リストルージュ」という言葉の意味と由来は? 灯晴:リストルージュは、英語でレッドリストを逆にしたものです。レッドリスト→リストレッド→リストルージュという感じ。ルージュはフランス語です。『ムーランルージュ』のオマージュにもなるので、このタイトルに決めました。 ――本作は後に連載作となりますが、その理由も気になります。 灯晴:去年バズったあとに編集さんに声をかけていただき、そこから掲載してもらって「連載しましょう」と。自分でも意味がわからないんですけど……本当にこんな感じのスピード感でした。 私自身、本作を連載用に考える脳がなくて、最初は全然アイデアが浮かばなかったんです。でも再び力を抜いてネームを描いたら1話ができました。これには自分でも驚きでしたね。 ――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか? 灯晴:『テガミバチ』の浅田弘幸先生です。私が漫画家になりたいと思ったきっかけ。繊細で独創的な物語でありながら、熱いお話を描ける所が本当に大好きです。 ――今後の連載について、作家としての展望、なりたい作家像があれば教えてください。 灯晴:今後の目標は物語を満足するまで描くことです。年齢を重ねて、新しい価値観を得られたので、その中で得たものや描きたいものを、上手く物語に込め続けられたら。そして描いたことない内容や難しい問題を扱うことなどの、チャレンジ精神も忘れずにいたいです。
小池直也