「来年は会社がないかもしれない」背水の父に頼まれ、IT企業の息子は福井に戻った 大ヒット老眼鏡でV字回復した「眼鏡の聖地」の企業
◆情報発信で、親子が激しい対立へ
眼鏡の部品づくりで培ったチタン加工の技術を生かし、他の分野へ進出することを考えた昭宏氏。 そこで使ったのは東京で培ったITの力でした。 当時まだ珍しかったホームページで新しい仕事をつかむためのアピールを始めます。 しかし、それに待ったをかけたのは、昭宏氏を呼び戻した張本人の父でした。 昭宏氏の兄で、現在西村金属社長の憲治氏は当時の様子について「父は頑固一徹物づくり職人で、18歳の高卒からずっと会社で働いてこの会社の基盤をつくり上げた人です」とした上で、ネットへの情報発信について「小さな街で競争しているので、どんな機種を選択しているか、どういう機械を置いているかという情報を外に出したら一気に追い付かれる恐怖があったと思うんです」と振り返る。 そして、思いもよらない激しい親子の対立が生まれてしまったのです。
■プロフィール
株式会社 西村プレシジョン 1993年に株式会社西村金属の貿易部門として設立。眼鏡や眼鏡部品の企画製造、仕入れおよび販売、精密機械部品の仕入れおよび販売などを行う。2000年代に地場産業の眼鏡関連が縮小するなか、インターネットでいち早く眼鏡以外の分野に活路を開き、業績を回復。2013年から薄さ2mmの携帯老眼鏡「ペーパーグラス」の販売を開始し、累計売上げ10万本を突破する大ヒット商品を生み出す。現在、西村昭宏氏が代表取締役を務める。