誰でもわかる幸せの方程式『幸せのメカニズム』―幸せな人がもつ4つの因子
人口が減少し、社会の成長が見込めない時代といわれます。一方で、科学技術の進化が、高齢化の進む日本の未来を、だれにとっても暮らしやすい社会に変えるのではないかともいわれています。わたしたちは一体どんな社会の実現を望んでいるのでしょうか。 幸福学、ポジティブ心理学、心の哲学、倫理学、科学技術、教育学、イノベーションといった多様な視点から人間を捉えてきた慶応義塾大学教授の前野隆司さんが、現代の諸問題と関連付けながら人間の未来について論じる本連載。18回目の今回から「幸せのメカニズム」について3回に分けて執筆します。 ----------
今回から3回に渡り、『幸せのメカニズム』について述べます。この本は、幸福学についての最初の本。売れました。私の本の中で、最初に出した『脳はなぜ「心」を作ったのか』の次に売れました。というか、今も売れ続けていますので、いちばん売れた本になるかも知れません。 ご存じ、幸せの4つの因子について書いた本です。幸せの4つの因子は、WEBでもいろいろなところに掲載されていますので、知っている方も多いかも知れません。以下です。 第一因子 自己実現と成長(やってみよう因子): 目標を達成したり、目指すべき目標を持ち、学習・成長していること 第二因子 つながりと感謝(ありがとう因子): 多様な他者とのつながりを持ち、他人に感謝する傾向、他人に親切にする傾向が強いこと 第三因子 前向きと楽観(なんとかなる因子): ポジティブ・前向きに物事を捉え、細かいことを気にしない傾向が強いこと 第四因子 独立と自分らしさ(ありのままに因子): 自分の考えが明確で、人の目を気にしない傾向が強いこと これらは私の研究室の学生が、幸せに影響する要因29項目87個の質問を作成し、インターネットで1500人の日本人に対してSD法(Semantic Differential法)によるアンケート調査を行った結果です。 質問には、全く当てはまらない/ほとんど当てはまらない/あまり当てはまらない/どちらとも言えない/少し当てはまる/かなり当てはまる/非常によく当てはまる の7段階で答えてもらいました。アンケート結果を因子分析した結果、幸せに影響する4つの心的因子を求めたものです。 また、1500人の回答者をクラスター分析しました。その結果、幸せな者(同時に調査したディーナーの人生満足尺度が高い群(全体の20%))は4つの因子すべてを満たしている傾向の高い群であることを明らかにしました。つまり、幸福の様相は人それぞれであるものの、全体としては幸せの4つの因子を満たした人が幸せな傾向を持つのです。よって、これら4つの因子を満たしているか否かによって、人々の幸福度の概略を計測できるのではないかと考えられます。 おかげさまで、この本は2013年以来、じわじわと売れ続けています。 今日も友人から言われました。「落ち込んだときには必ずこの本を読み返します。この本を読むと元気が出ます」。うれしいですね。 前に、他の友人の奥さんが、この本のあとがきを読んで号泣していた、という話もお聞きしました。ありがたいことです。せっかくなので、あとがきをここに再掲してみましょうか。