〈目撃〉ホホジロザメをソロで狩るシャチ、初の報告、2分で肝臓を正確に抜き取る超早業
サメにとっては悪い知らせ
しかし、スターボードの新たな技は、南アフリカのサメに悪影響を及ぼすかもしれない。エビスザメとホホジロザメは近年、南アフリカの南西海岸からほとんど姿を消している。 タウナー氏によれば、2023年6月にスターボードがホホジロザメを殺した後、ホホジロザメは約4カ月間南アフリカを離れ、その後以前よりも数を減らして戻ってきた。以前にも、シャチに襲われた後でホホジロザメが似たような行動をするのをタウナー氏は見てきた。 規制のない乱獲により、サメの数がはるかに大きな脅威にさらされていることをタウナー氏は認めるが、既に困難な状況にあるサメに対してシャチはさらなる圧力をかけている。 頂点捕食者であるエビスザメとホホジロザメがいなくなることにより、南アフリカ沿岸全体に効果が波及するかもしれないと、タウナー氏は補足する。例えば、アザラシや魚といった被食者の数が増加する可能性がある。タウナー氏の研究によれば、クロヘリメジロザメ(Carcharhinus brachyurus)などの他のサメがすでに頂点捕食者の座を占めつつあるようだ。 シャチの群れによる「(サメの個体数への)重大な影響は見過ごされるべきではない」という。 一方で、タウナー氏はシャチの兄弟と彼らの自信に引き続き魅了されている。例えばスターボードが肝臓を振り回す「勝利の一周」などだ。「捕食者としてこれほど効率的なんですから、少し大げさになって殺しを楽しんでもいいではありませんか」とタウナー氏は言う。
文=Jessica Taylor Price/訳=杉元拓斗