〈目撃〉ホホジロザメをソロで狩るシャチ、初の報告、2分で肝臓を正確に抜き取る超早業
ソロ狩りの意味と価値
世界中に生息するシャチは、サメや魚、海洋哺乳動物などさまざまな獲物を仕留める戦略において際立って柔軟で創造的だと、米オレゴン州立大学の海洋生態学者であるロバート・ピットマン氏は電子メールで語っている。 例えば、クジラのように自分より大きな獲物を狩るために、オオカミのような群れを作って狩りをするシャチもいる。 近年はそうした群れでの狩りが多くの注目を集めてきた。南極のシャチは協力して波を作り、獲物を流氷から押し流す「波さらい戦術」をおこなっている。2017年には、ロシア沖でシャチが連携してホッキョククジラ(Balaena mysticetus)を仕留めた。また、近年オーストラリア沖では、少なくとも12頭のシャチからなる群れが、地球上で最大の動物であるシロナガスクジラを殺す様子が科学者によって目撃されている。 しかし、シャチが単独で狩りをすることもある。北米西海岸沿いのシャチは、「単独で狩りをすることがほとんどですが、様々な理由で群れを形成し、獲物であるサケをある個体が捕まえたときにはよくシェアします」と、『シャチ誌:シャチへの愛と恐れ(The Killer Whale Journals: Our Love and Fear of Orcas)』の著者で、生物学者であるハンネ・ストラガー氏は言う。 とはいえ、ソロでより大きな種を狩ればリスクもより高まる。「単独で狩りをするシャチは珍しいです。おそらく協力して狩りをすることによって、より効率的に、はるかに大きなサイズの獲物を仕留められるからでしょう」とピットマン氏は言う。また、今回のホホジロザメのように、獲物が病気や若いなどの理由で弱いと思われる場合にも、単独で狩りをする。 スターボードの非凡な偉業に関して、「正直、驚いていません」と、ケープタウンを拠点とする非営利団体「シーサーチ」の設立者の1人で、シャチの研究者であるシモン・エルウェン氏は言う。 オスのシャチの体重は6トン弱であることが多い。今回のホホジロザメの体重は100キロほどだったため、「かなり一方的な戦いです」とエルウェン氏は言う。