テストステロン値の低下「ストレス解消」で数値が戻ることも 更年期障害の症状が軽減も メタボにつながると逆効果
【徹底解説・第3弾 男性更年期・治療と予防】 順天堂大学大学院医学研究科・井手久満特任教授に聞く 睡眠障害や意欲の低下、気分の落ち込みなどで、つらい症状をもたらす「男性更年期障害(LOH症候群)」には、男性ホルモンのテストステロンの低下が関わる。症状や血液検査などによって男性更年期障害と診断されたときには、保険適用のテストステロン補充療法(TRT)が選択肢となる。だが、TRTだけが男性更年期障害の治療法ではない。 「2022年に改訂された『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』(医学図書出版)では、2007年版にはなかった<ストレスによるテストステロン値の低下>が、初めて盛り込まれました。テストステロン値の低下には、ストレスや生活習慣病が大きく関わります。それらを改善することで、男性更年期障害の症状が軽減されることがあるのです」 こう指摘するのは、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科学デジタルセラピューティクス講座の井手久満特任教授。日本メンズヘルス医学会の理事などを務め、LOH症候群診療の手引き作成委員会の副委員長でもある。 「過度なストレスを受けるとテストステロン値は急激に下がります。もちろん、TRT療法が必要なケースもありますが、うまくストレスを解消すると数値が戻りやすいのです」 たとえば、上司の圧力や部下の突き上げなどで、仕事に強いストレスを感じていたとしよう。このときテストステロン値は下がりやすい。ストレス発散のために帰りに一杯、気の置けない仲間と飲食を楽しんでストレス解消につながれば、テストステロン値は正常に戻ることもある。 だがその一方で、連日の飲食で肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪に高血圧、高血糖、脂質異常症の2つ以上を合併)になると、これまたテストステロン値は下がる。ストレス解消がメタボにつながると逆効果になる。週末に、ゴロゴロと寝てばかりいるような状態もよくない。 「食生活の乱れを改善することがなによりです。夏休みなどの長期休暇で食生活が自然に正しく導かれ、テストステロン値が正常に戻るケースもあります」