【解説】英語を「話す力」に課題…6割以上の生徒が1問も正解できず 学力向上のカギに「対話型AI」
どんな問題だったか。正答率が最も低かった問題が「ニュージーランドから来た留学生の環境問題についての英語の発表」で、「日本では店でレジ袋を売ることをやめるべきだ」という留学生の意見を聞いて、自分の意見を英語で答えるものでした。この発表を聞いた後、考える時間は1分だけで、その直後に30秒間で自分の考えとその理由を英語で答えないといけません。なかなかの難易度で、正答率は4.2%にとどまりました。 正解できなかった4割近くの生徒からは「聞いたことを理解したが、話す内容が思い浮かばなかった」などとの声もありました。
文部科学省などは、問題の場面設定が複雑で難易度が高かったことや、生徒がスピーキングテストの仕様に慣れていなかったことなどが、正答率が低くなった要因として考えられるとしています。
英語教育に詳しい京都大学の金丸敏幸准教授も「このテストを中学生に課すのはなかなか酷」「正しい英語で回答しようとすると、大人でも10秒、20秒と時間を区切って回答するのは難しい」。さらに「面接官などとの会話なら間をとりつつ伝えたいことを話すこともできるが、デジタル相手だとよりシビアな環境になってしまった」と指摘しています。 とはいえ、「日本人にとって国際共通語である英語を話せるようになるためには、たくさんの表現に触れることが必要」と話しています。
■対話型AIで底上げ…千葉県の高校に実証事業で導入予定
今後の英語教育をどうしていくか、2つめのポイントが「対話型AIで底上げへ」です。 文部科学省は、最先端のAIを使って英語の話す力を伸ばす取り組みも始めようとしています。 早稲田大学発のベンチャー企業が、対話型のAIを開発しました。アクセスするとキャラクターが表示され、利用者の英語のレベルに応じたやりとりができます。対話の時間は1回20分程度。終了後に「文法」や「発音の正確さ」「臨機応変なやりとりができているか」などアドバイスがもらえます。 文科省はこれを、9月をめどに千葉県成田市の県立高校の生徒を対象に実証事業として導入する予定で、家庭学習に活用してもらう方針だといいます。 今回、話す内容が浮かばなかった生徒が3分の1に上りました。まずは日々の授業などで自分の考えを持つこと。そして、英語を使って表現する経験を重ねていける環境整備が求められています。 (2023年8月1日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)