石破茂首相、不記載議員に政倫審出席繰り返し促す 参院選へ〝区切り〟狙うも党内に反発も
石破茂首相(自民党総裁)が、派閥パーティー収入不記載事件に関係した議員に対し、衆参両院の政治倫理審査会への出席を促す発言を繰り返している。「政治とカネ」の問題で大敗した衆院選を踏まえ、不記載議員が政倫審で弁明することで〝けじめ〟をつけ、来夏の参院選への影響を抑える狙いがある。党内にも出席に前向きな声がある一方、反発もあり、首相の呼びかけが実現するかは不透明な状況だ。 ■おのおのが説明責任果たす 首相は第2次内閣を発足させた11日の記者会見で「不記載問題におのおのが説明責任を果たすため、政倫審の場を含めて、あらゆる場を積極的に活用するように促していく」と強調。それに先立つ党会合でも党所属議員に直接、出席を呼びかけた。 連立パートナーの意向もある。衆院選では自民と連立を組む公明党にも不記載事件の批判が直撃し、8議席減の惨敗となった。9日の首相との会談で「けじめ」を要求した斉藤鉄夫代表は、関係議員の政倫審出席に言及している。 野党は不記載議員らの政倫審出席を要求し続けているが、これまでに弁明したのは衆参両院とも一部の議員にとどまる。政倫審への出席は議員個人の任意によるもので、強制力はないためだ。先の通常国会で、衆院政倫審は弁明していない44人への審査を全会一致で議決したが、全員が出席しなかった。 ■事件蒸し返しへの警戒感 一方で、自民内には、出席により事件が「蒸し返される」ことへの警戒感が根強い。柴山昌彦元文部科学相は12日、記者団に「すでにわれわれは記者会見で説明し、選挙民の洗礼を受けた形で国会に来ている。野党に言われたからといって政倫審に出席するのは筋が違う」と反発した。自民関係者からも「旧派閥の末端の議員が政倫審に出たところで、何の解明にもならない」との声が上がる。 首相は衆院選で政倫審出席を公認判断の材料とし、参院選でも同様の対応を取る考えを示している。閣僚経験者は、参院選への影響を念頭に「年内に政倫審への出席は終わらせてしまった方がいい」と指摘する。 「政治とカネの問題をこのままにしてはいけない。決着をつけんといかん」。首相は周囲にこう語るが、「決着」に向けて指導力を発揮できるかはまだ見通せない。(末崎慎太郎)